欧州理事会、新型コロナ対策の連携強化も、予算協議に進展みられず

(EU)

ブリュッセル発

2020年11月24日

欧州理事会(EU首脳会議)は11月19日、新型コロナウイルス対策を主な議題として、非公式会合をオンラインで開催した。欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は会合後に記者会見を開き、新型コロナウイルス対策における検査の実施やワクチンの現状などの今後の見通しを示した。

ワクチンは最短で12月後半に承認の見込み

まず、ミシェル常任議長は、PCR検査を補完する迅速抗原検査の使用について、EUの共通アプローチとしてどのように展開していくべきか議論したと発表。抗原検査は、PCR検査に比べて、安価でかつ短時間で結果が出るという利点があるが、その検査精度には検査キットにより、ばらつきがあるとされる。そこで、加盟国間での抗原検査結果の相互承認を目指すEUとしては、検査精度の共通基準を設ける必要があるとした。なお、欧州委は11月18日に、検査精度を少なくとも80%以上とするなどの迅速抗原検査の利用に関する勧告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表している。

フォン・デア・ライエン委員長はワクチンに関して、ドイツのビオンテックが米国製薬大手ファイザーと共同開発を進めるワクチンと、米国のモデルナが開発を進めるワクチンに関して、このまま問題がなく欧州医薬品庁(EMA)の審査が進んだ場合、最短で12月後半には条件付きで承認が得られる可能性がある、との見解を示した。欧州委は11月10日にビオンテック‐ファイザーと、11月17日にはドイツのキュアバックと事前購入契約に合意したと発表している。締結済みの事前購入契約の合意件数はこれで5件になった。さらに、モデルナとも引き続き事前購入の協議を進めるとした。

行き詰まり状態にあるMFFと復興基金に関しては進展がみられず

今回の欧州理事会では、11月10日にEU理事会(閣僚理事会)と欧州議会の間で政治合意した2021~2027年度の中期予算計画(MFF)と、新型コロナウイルス対策予算である復興基金(2020年11月11日記事参照)が、ハンガリーとポーランドの反対により正式な採択ができていない問題も議題となった。しかし、大多数の加盟国が政治合意案に賛成する一方、法の支配と予算執行を関連付けるメカニズムの導入をめぐりハンガリーとポーランドが反対する構図は変わっておらず、議長国ドイツを中心に今後も加盟国間での交渉が続けられるとみられる。

(吉沼啓介)

(EU)

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