インド、米大統領選でのバイデン氏勝利確実を歓迎

(インド、米国)

ニューデリー発

2020年11月10日

米国大統領選挙における民主党候補のバイデン前副大統領の勝利宣言に対し、インドではおおむね好意的な反響が広がっている。特に、トランプ政権下において、移民排除の一環でIT技術者を含むH1Bビザ(短期就労専門家ビザ)の発給が抑制されていたところ、当該ビザ発給緩和への期待が高い。約40万人のH1Bビザホルダー(保有者)のうち約30万人超がインド人で、在米インド人に深刻な影響が出ていた。

選挙戦を振り返ると、共和党、民主党ともに、印僑票の取り込みを図ってきた。例えば、バイデン氏は8月15日のインド独立記念日に合わせ、インドに対して好意的なビデオメッセージを出した。在米印僑は有権者数では約180万人と全体の5%にすぎないが、フロリダ(8万7,000人)やペンシルべニア州(6万1,000人)など、両党の支持率が拮抗(きっこう)するスイング・ステートでそれなりの数があり、両党の重点的な活動が目立っていた。

インドにとっての外交面での関心事項は、2020年5月以降の印中国境対峙(たいじ)を契機とする、対中関係悪化との関係だ。10月には日米豪印4カ国外相会談が東京で開催されるなど、「Quad(クアッド)」の枠組みが安全保障上の重要性を増している。インド政府による中国製携帯アプリの使用禁止を契機として中国マネーの対印デジタル投資減速の兆しがみられたところ、グーグルやフェイスブック、アマゾンは通信・デジタル分野の投資を加速させた。民主党も、これまで超党派でインド支持を表明していたこともあり、対中戦略上での印米連携には大きな方向転換はなく、安全保障やデジタル分野での連携は引き続き強化される見込みだ。

しかし、同時に警戒感も広がっている。特に、2019年12月にインドで成立した市民権法は、ムスリム以外の宗教の不法移民に対して市民権を付与する。人権の観点から、副大統領となるカマラ・ハリス氏が同法を厳しく非難してきたため、米印関係の争点になる可能性がある。また、新政権は環境対応について現政権に比べて積極的となることが見込まれ、中国・米国に次ぐ世界3位の二酸化炭素(CO2)排出国のインドにも対応が求められる可能性がある。

(小野澤恵一)

(インド、米国)

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