RCEP協定、マレーシアではサプライチェーン強化に期待

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年11月30日

11月15日にインドを除く15カ国(ASEAN10カ国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)が署名した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定について、マレーシアでは政府、産業界双方から歓迎の声が上がる(2020年11月16日記事参照)。

「新型コロナ禍」での早期批准を求める

アズミン・アリ国際貿易産業相は11月15日、世界のGDPの約3割をカバーする巨大なマーケットアクセスを享受できることや、ASEAN+1自由貿易協定(FTA)のルールが統合されることなどを背景に、マレーシアの貿易拠点および投資先としての魅力維持に貢献すると述べた。今回署名しなかったインドに関しては、「インドの加入は域内の繁栄にとって重要」として、加入を切望する姿勢を示した。

約3,000社の製造業が加盟するマレーシア製造業者連盟(FMM)のソウ・ティオン・ライ会長は、RCEP協定においてASEAN+1FTAが統合され、各FTA間のルールの齟齬(そご)が減ることにより、マレーシア企業にとって域内取引の円滑化やサプライチェーンの強化が期待できると述べた。「新型コロナウイルス禍」に鑑み、マレーシア政府および他のASEAN諸国に対して、早期批准への迅速な対応を求めることを強調した。

マレーシアのシンクタンクの民主主義・経済研究所(IDEAS)は、政府に対し、RCEP協定に弾みをつけるため、より野心的な政策や改革を実施する必要があると述べた。トリシア・ヨー所長は、RCEP協定の発効に向けた手続きを進めるに当たり、補完的な枠組みである、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)についても、保留となっている国内手続きを進める議論をすべきと進言する。

2019年度ジェトロ進出日系企業実態調査PDFファイル(19.8MB)によると、在マレーシア日系企業では原材料や部品の約3割を日本、次いでASEAN(10.7%)、中国(9.6%)から調達しており、輸出先も約4割がASEAN、次いで日本(30.0%)、中国(7.0%)と、域内での多岐にわたる調達・販売活動を行っている。こうした背景から、日系企業にとってRCEP協定は、例えば日本産部品をマレーシアで加工して中国に輸出するような取引のほか、国際貿易産業省が発行する「連続する原産地証明書」(Back to Back Certificate of Origin)を利用して、域内の原産品をマレーシアに集荷し、マレーシアを貿易拠点として域内各国に再輸出する取引など、製造業のみならず、サービス業にとってもマレーシアを活用できるチャンスが広がるとみられる。

(田中麻理)

(マレーシア)

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