年末にかけてペソ安は進むも、公定レートの通貨切り下げなしと予測

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年11月13日

アルゼンチン中央銀行は11月5日、国内外43人の民間エコノミストを対象に10月28~30日に実施したアンケート結果を集計した最新の経済見通し(REM)を発表した。

2020年の消費者物価上昇率(インフレ率)見通しは35.8%(前回調査比1.1ポイント減)となった。2019年の実績値53.8%と比べて18.0ポイント低い見通しとなっている。2021年と2022年の見通しは、それぞれ48.9%(同1.4ポイント増)、35.9%(同0.3ポイント増)と前回調査に比べて見通しが悪化した。月次で見ると、1月までは物価上昇に勢いがあるが、その後はやや抑制される見通しとなっている(添付資料図参照)。

2020年の実質GDP成長率見通しはマイナス11.6%(前回調査比0.2ポイント増)だった。2021年は4.5%増(同0.5ポイント減)、2022年は2.5%増(同±0.0ポイント)となり、2021年は前回調査から見通しが悪化した。

四半期でみると、2020年第3四半期(7~9月)の実質GDPは、前期比(季節調整値)10.5%増(同0.7ポイント増)と予測。第4四半期(10~12月)は同2.9%増(同1.1ポイント減)、2021年第1四半期(1~3月)は同1.2%増(同0.1ポイント減)と、見通しを引き下げた。

2020年12月の為替レートの月平均値の見通しは1ドル84.00ペソ(前回調査比0.2ペソ上昇)だった。11月5日時点の為替レートは1ドル79.09ペソで、年末にかけてさらにペソ安が進む見通しとなっている。2021年12月の見通しは1ドル125ペソ(同3.5ペソ上昇)だった。2020年10月には公定レートと並行レート(Dolar Blue)の乖離率が100%を超える動きがみられた(注)。通貨切り下げが行われる可能性も指摘されているが、11月6日付の現地紙「エル・クロニスタ」電子版は今回の調査結果について、「アナリストは年末に向けて、通貨切り下げの可能性はないと予測した」としている。

(注)政府が介入できる公定レートに対し、並行レートではよりペソ安が進んでいる。政府への信用不安や先行き不透明感から、市中でのドル需要は増大しているが、一方で、政府は資本逃避を防ぐ目的で外貨取引規制を導入しているため、個人、法人ともに正規の金融取引では一定額以上の外貨を購入することができない。そのため、闇市場での交換需要が生まれ、レートが悪くても(ペソ安ドル高)ドル購入への需要は低下しないため、さらにレートが悪くなるという悪循環に陥っている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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