在メキシコ日系企業はバイデン新政権のUSMCA関連政策を注視

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2020年11月25日

米国大統領選挙でジョー・バイデン氏の勝利が確実と報道されていることを受け、ジェトロが在メキシコ日系企業を対象に11月11~13日にアンケートを実施したところ、バイデン新政権が誕生した場合、日系企業は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に関連した政策を注視していく傾向がみられた。

回答企業(96社)の業種内訳は、自動車関連の製造業が55社、その他の製造業が17社、製造業以外の業種が24社だった(添付資料参照)。米大統領選の結果が経営環境に与える影響については、半数近くが「分からない」とし、「良くも悪くもない」が33%、「良い」が15%、「悪い」と回答した企業は4%だった。多くの企業が自社の操業にもたらす影響を測りかねている様子がみられる一方、「サプライズ(突発的な)規制や政策がなくなることを期待」「安定感のある外交施策、関税方針はメキシコ経済にプラスに働く」とポジティブに受け止めている声も複数あった。

新大統領誕生の影響度に関する質問には、「分からない」が約4割、「ほとんど影響しない」が約3割、「まぁ影響する」との回答が2割弱を占め、「メキシコにとってはUSMCAが先に立っており、大きな違いはない」とのコメントにみられるように、政権交代そのものの影響は小さい、と考える企業が多いことが読み取れる。また、同設問に「影響する」と回答した企業では、「米墨間のボーダーエリア関係の安定化に期待」「トランプ政権とは対メキシコ政策が異なってくる」など、米・メキシコ関係の変化を念頭に置いたコメントが複数みられた。

新政権が誕生した場合に注視する政策としては、「USMCAに基づくメキシコ国内の労働環境の監視強化」が最も多く、「対中国政策」が続いた。対中政策については、「中国からの対米輸出が増加し、メキシコの対米供給基地としての重要性が低下する」などのコメントがあった。期待する政策は、「USMCAの原産性判断基準の緩和(自動車産業)」が最も多く、「新型コロナウイルス感染対策」と「環太平洋パートナーシップ協定(TPP11)への参画」が続いた。

自動車関連企業はバイデン氏の環境政策を注視

自動車産業関連の在メキシコ日系企業2社に個別にヒアリングを実施したところ、両社ともバイデン氏の環境政策を注視するとし、電気自動車やハイブリッド車の需要が急速に高まることがあれば、「メキシコの生産体制を見直さざるを得ない」「長期的には(ガソリン車中心のサプライチェーンが形成されている)メキシコにおける生産にマイナスに働く」とコメントした。また、コロナウイルス感染対策について「マスク装着を推奨する程度では問題ないが、経済・社会活動への制限が課されれば米国自動車販売市場への影響が懸念される」とした。

(松本杏奈)

(メキシコ、米国)

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