バイデン氏の米大統領当確速報にカナダは総じて歓迎ムード

(カナダ、米国)

トロント発

2020年11月10日

11月7日に米国大統領選挙でジョー・バイデン氏の当確が報じられたことを受け、カナダのジャスティン・トルドー首相はいち早く当選を祝福するメッセージを送った。トルドー首相は声明で、「カナダと米国は類いまれな関係を謳歌(おうか)している。われわれはこの基盤の上にさらなる進展を築き、両国民の安全と健康を新型コロナウイルスの影響から守り、平和と包摂、経済的繁栄、そして気候変動問題での行動を前進させるために協調を続ける」と述べた。連邦政府にとどまらず、ダグ・フォード・オンタリオ州首相、ジョン・トーリー・トロント市長らも続けて祝意を表明した。カナダ政界の反応や各メディアの報道は、バイデン氏当確を歓迎するコメント一色となった。

この背景には、ドナルド・トランプ大統領就任以降の4年間に起きた北米自由貿易協定(NAFTA)破棄通告からの再交渉、カナダから輸入される鉄鋼・アルミニウム製品への関税課税問題、トルドー首相やフリーランド副首相に対する暴言など、トランプ大統領に振り回され続けてきたカナダの苦悩が見え隠れする。

バイデン氏の表明する施策へのカナダの懸念としては、キーストーンXLパイプラインの承認撤回がある。これが実施されれば、カナダ・アルバータ州から米国ネブラスカ州への石油輸送量増強が阻まれ、これまで多額の投資を行ってきたアルバータ州政府にとって大きなリスクとなることが指摘されている。また、米国がイランやベネズエラとの関係改善を図り、両国からの石油の対米輸出が再開されると、カナダ産石油にとって市場での競争は激しくなることが予想される。ただ、バイデン氏がシェールオイル掘削のフラッキング(水圧破砕技術)を規制し、米国で石油の減産が進めば、他の産油国にとっては市場シェア拡大につながるため、カナダ石油業界への影響は必ずしもマイナスだけではない、という見方もある。

輸出の75%を米国に依存するカナダにとって、バイデン氏が「バイ・アメリカン」政策に4,000億ドルを投じることを約束していることも、カナダ企業の米調達市場へのアクセスが制限されるおそれがあることから、課題を生む可能性がある。それでも、トルドー首相の元外交政策顧問のローランド・パリス氏が「米国とのより円滑で互いに敬意を持った関係が生まれるだけでも改善だ」と述べた(「グローブ・アンド・メール」紙電子版11月8日)ように、カナダにとっては、2021年からの4年間はより穏やかな対米関係が続くことが期待されている。

(江崎江里子)

(カナダ、米国)

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