ニューサウスウェールズ州予算案、雇用創出が最優先

(オーストラリア)

シドニー発

2020年11月20日

オーストラリアの最大都市シドニーを州都とするニューサウスウェールズ(NSW)州政府は11月17日、2020/2021年度(2020年7月~2021年6月)の予算案(注)を発表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響によって打撃を受けた州経済を再建するため、インフラ投資や減税などの経済支援策を盛り込んだ。

予算案では、雇用創出を最優先事項として、インフラ整備事業に1,071億オーストラリア・ドル(約8兆1,396億円、豪ドル、1豪ドル=約76円)を投じるほか、職業訓練を強化して、失業者の復帰を支援する。新たに30人以上を雇用した企業には、新規雇用分の給与税減税などのインセンティブを付与し、最大2万5,000人の雇用創出を目指す。また、飲食店や娯楽・観光施設で利用可能な1人当たり100豪ドルのバウチャーを配布して消費を喚起する。

税制関連では、給与税の納税対象となる給与支払総額の閾値を100万豪ドルから120万豪ドルに引き上げるとともに、今後2年間の給与税率を5.45%から4.85%に引き下げる。閾値(いきち)未満の企業には、行政関連の手数料支払いに利用できる1,500豪ドルのバウチャーを配布して、中小企業の負担軽減を図る。また、住宅購入の初期費用を軽減するため、印紙税制度の見直しに取り組む方針を示した。

NSW州経済は、2019/2020年度に1.0%縮小し、2020/2021年度にはさらに0.75%縮小するが、2021/2022年度には2.5%まで回復すると見込まれている。失業率は、2020/2021年度に6.5%、2021/2022年度に6.0%、2022/2023年度に5.75%と次第に改善すると予測している。なお、州の財政は、2021/2022年度に160億豪ドルの赤字を見込んでいるが、2024/2025年度には黒字化するとの見通しを示した。

NSW州のグラディス・ベレジクリアン首相は「われわれはこの1年の間に干ばつ、山火事、新型コロナウイルスという3つの危機に直面してきた」と述べ、「新型コロナウイルスによる前例のない健康と経済の危機から立ち上がるため、あらゆる支援を行う」と決意を表明した。

(注)2020/2021年度予算案の発表は6月に予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期されていた。

(住裕美)

(オーストラリア)

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