8月の貿易収支、黒字継続も黒字額は減少、国内産業に与える影響懸念

(インドネシア)

ジャカルタ発

2020年10月01日

インドネシア中央統計庁(BPS)は9月15日、8月の輸出額が前月比4.6%減の130億6,920万ドルとなった一方、輸入額は2.7%増の107億4,180万ドルとなったと発表した。貿易収支は23億2,740万ドルの黒字で引き続き黒字を維持したが、前月比で28.1%減小した。1~8月の輸出入はともに前年同期比で減少した。前年同期に赤字だった貿易収支は110億5,030万ドルの黒字に転換した(添付資料表参照)。

品目別の輸出額は、石油・ガスと非石油・ガスでそれぞれ前月比10.0%減、4.3%減だった。非石油・ガスでは、自動車・部品のみ8.6%増となり、それ以外は動植物性油脂(9.6%減)、鉱物性燃料(11.5%減)、宝石類(16.6%減)、鉄鋼(3.2%減)と一様に減少した。動植物性油脂の輸出減少は、パーム油に対する中国の需要減少が要因とみられる(「レプブリカ」紙9月17日)。輸入では、石油・ガスが前月比0.9%減少した一方、非石油・ガスが3.0%増加した。

非石油・ガスの相手国別の輸出額は、上位3カ国は前月と変わらず、中国24億6,480万ドル(2.4%減)、米国16億2,120万ドル(0.8%増)、日本9億8,190万ドル(6.8%減)となった。上位3カ国に続くインド向け、シンガポール向けも減少となった。上位3カ国への輸出は非石油・ガスの輸出全体の40.7%を占めた。相手国別の輸入額は、中国が4.3%増の33億5,840万ドルだった。以下、米国5億7,880万ドル(2.1%増)、日本5億5,900万ドル(15.1%減)、シンガポール5億5,390万ドル(14.2%減)、マレーシア4億1,760万ドル(11.1%増)と続いた。

1~8月の貿易収支では、中国との間では69億390万ドルの赤字だが、前年同期比で赤字幅は縮小した。また、米国との貿易収支は68億4,730万ドルの黒字で、主要国では最も大きく、前年同期比でも拡大している。

黒字額の減少が国内経済に与える影響を懸念

8月の貿易収支は、前月に引き続き黒字になったものの、黒字額は減少している。アグス・スパルマント商業相は「海外の需要減が8月の輸出に大きな影響を与えた」と述べ(「レプブリカ」紙9月17日)、経済改革センター(CORE)エコノミストのムハマド・ファイサル氏は「世界貿易が依然として新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けている限り、輸出実績の改善は難しい。政府は短期的に産業を活性化するために、国内消費の促進を行うべきだ」との見方を示した(「コンパス」紙9月16日)。

また、経済金融開発研究所(Indef)のエコノミスト、ビマ・ユディスティラ氏は「石炭、石油・ガス、パーム油を含むコモディティーの輸出減少により、これらの産業分野の企業が大量解雇を行う懸念がある」と分析した。さらに、貿易黒字額の減少が投資家による投資延期につながる恐れもあるとしている(「オケゾーン」紙9月20日)。

(デシー・トリスナワティ、尾崎航)

(インドネシア)

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