ジェエンベコフ大統領が辞任、政治混乱は越年の可能性

(キルギス)

タシケント発

2020年10月20日

中央アジアのキルギスで10月15日、ソオロンバイ・ジェエンベコフ大統領が辞任を表明した。任期(2023年まで)途中での辞任は歴代大統領で初めて。10月4日に行われた議会選挙結果をめぐる混乱を収拾できないことを理由に挙げている。

任期途中に大統領が辞任した場合、憲法規定(第68条1項)にのっとり、次の大統領選挙まで国会議長に権限が引き継がれる。しかし、現議長のカナト・イサエフ氏は代行就任することを拒否。サディル・ジャパロフ首相は大統領の権限が自身に移譲されたと発表している(注1)。

キルギス中央選挙管理委員会は10月17日に議会選の再選挙を12月20日、大統領選挙を2021年1月17日に実施する可能性があると発表。また、ジャパロフ首相は議会選挙制度の変更や、憲法改正を問う国民投票の実施について言及しており、政治混乱が2021年まで継続する可能性も取り沙汰されている。加えて、キルギス憲法は「大統領代行は次期大統領選挙に立候補できない」と規定しており(第68条2項)、ジャパロフ氏の大統領選への動き次第では、次期政権の法的正統性(注2)が問われ得る。

キルギスと政治、経済ともに強い結びつきを有するロシア政府は現地情勢を見極める構えだ。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は10月15日、キルギスへの資金援助を当分の間見合わせることを発表。企業活動は徐々に正常に戻りつつあるが、政治混乱が継続すれば、ドナー国や国際金融機関によるキルギス向け支援(資金援助、機材供与・インフラ関連事業など)の遅延が想定され、キルギスのマクロ経済運営が一層厳しくなる可能性もある。

写真 政治的混乱が続くが、ウズベキスタンとの物流は正常に機能している。ウズベキスタン国境(アンディジャン州)を抜けるキルギスからのトレーラー(ジェトロ撮影)

政治的混乱が続くが、ウズベキスタンとの物流は正常に機能している。ウズベキスタン国境(アンディジャン州)を抜けるキルギスからのトレーラー(ジェトロ撮影)

(注1)憲法第68条1項では、「国会議長が大統領の薬務を果たせない場合は、首相もしくは首相代行に大統領権限が移譲される」と規定している。

(注2)キルギス国内法「非常事態について」は、非常事態宣言下での政府機構(憲法で規定しているもの)の変更を禁止している(第23条)、非常事態宣言下(10月19日まで)で行われたジェエンベコフ大統領の辞任や大統領権限の移譲は法律の要件を満たしていないと指摘する専門家もいる。

(高橋淳)

(キルギス)

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