EU理事会、新型コロナ対応としての移動制限に関する共通基準を採択

(EU)

ブリュッセル発

2020年10月14日

EU理事会(閣僚理事会)は10月13日、新型コロナウイルスへの対応として、EU加盟国がEU域内での人の移動に関して入国制限を行う場合の共通の基準を定めた勧告(Recommendation)を採択外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同勧告は9月4日の欧州委員会提案(2020年9月7日記事参照)を受けたもので、理事会で検討が進められてきた。EUの基本原則である域内の人の自由移動を確保すべく、制限は公衆衛生の保全目的で必要最小限度に抑えることや、EU市民の入国および通過は原則として許可され、かつ、加盟国間での差別的な扱いは認めないといった大枠では一致したものの、当初の欧州委提案に比べ、加盟国の裁量の余地を許容した内容となっている。

共通の基準に加え、加盟国が追加的な基準や傾向を考慮することを許容

勧告では、加盟国が移動制限を設ける場合、(1)14日間の10万人当たりの新型コロナウイルス新規感染者数の合計、(2)7日間に実施された検査結果での陽性反応の割合、(3)7日間に実施された10万人当たりの検査実施数の3基準を考慮することが確認された。

同基準に基づき、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が欧州各国〔EU加盟国、英国(移行期間中)、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー〕の感染状況を地域レベルで「緑」「オレンジ」「赤」に色分けする。上記(1)が25人未満かつ(2)が4%未満の地域を「緑」と区分し、移動の制限を設けてはならない。高リスクの「赤」地域は(1)が50人以上かつ(2)が4%以上、もしくは(1)が150人以上と定義された。「オレンジ」は中間に位置し、情報が不十分な地域は「グレー」とする。

採択された勧告では、加盟国は公衆衛生目的で「緑」以外の地域からの入国者に移動制限を設ける場合、追加的な基準や傾向を考慮することができるとされ、この目的でECDCは人口規模や入院率、集中治療室への入院率、致死率のデータを毎週公表する。このような規定は欧州委の当初提案にはなく、加盟国の裁量に配慮したかたちとなった。さらに、入国制限措置としての検疫または入国の際の感染検査について、当初提案では「検疫よりも感染検査の実施が望ましい選択肢」としていたが、勧告では「加盟国は検疫・自己隔離の期間および代替手段の可能性について、協調する取り組みを強化すべきだ。可能な場合、各加盟国の戦略を考慮した上で、検査体制の整備が奨励される」との表現にとどまった。

情報公開の重要性については加盟国間で一致がみられ、EUウェブサイト上のプラットフォーム「Re-open EU外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」上にECDCが公表する最新の色分けマップなどが掲載される。

(安田啓)

(EU)

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