英金融行為規制機構、移行期間終了後の英金融機関に規制対応への猶予付与

(英国、EU)

ロンドン発

2020年10月12日

英国金融行為規制機構(FCA)は10月1日、金融サービス分野に対し、EU離脱の移行期間終了後の対応に関して、一部猶予期間を与えることを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。取引報告義務や株式発行、信用格付けなどの一部主要な業務を除き、新規制への対応を2022年3月31日まで猶予するとしている。財務省はFCAなどの金融規制当局に対し、一時的に金融サービス法に経過的な規定を設けることができる権限として一時的移行権外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(TTP)を付与しており、今回FCAがこの権限を行使したかたちだ。FCAのナウシカ・デルファス国際事務局長は猶予期間について、「TTPにより企業は規制の変化に対応するための時間を確保できる」としながら、「TTPの行使が不適と考えられる主要な業務については、(移行期間が終了する)2020年12月31日までに英国の規制義務の変更に企業が準拠するために準備することを期待している」とコメントした。

英国清算機関利用に対しても猶予措置

一方、EU側では、欧州委員会が9月21日、英国を拠点とする中央清算機関(CCP)の利用に関して、EU内の金融市場参加者に対し、2022年6月までの猶予期間を与えると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。このCCPは、デリバティブ取引などの金融取引で売り方と買い方の双方の間に立ち、債権・債務の当事者となって決済を履行することで、システミック・リスク(注)の軽減や、資金決済などにおける安全性を確保する機能を有する。猶予期間中、CCPに関する一時的な同等性が英国に対して認められることになり、EUの金融市場参加者は英国のCCPを引き続き利用できる。現在、英国・EU間の金融サービスの断絶を防ぐためEU側との交渉が行われている(2020年6月5日付地域・分析レポート参照)が、今回の措置により、移行期間終了時の金融市場の混乱を防ぎつつ、EUの金融市場参加者が英国のCCPへの依存度を低下させるための猶予期間を与えるものとされている。

(注)個別金融機関の支払い不能や、特定の市場または決済システムなどの機能不全が他の金融機関や市場、金融システム全体に波及するリスクのこと。

(尾崎翔太)

(英国、EU)

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