製造業の変革促進する新たな戦略発表

(オーストラリア)

シドニー発

2020年10月05日

オーストラリアのスコット・モリソン首相は10月1日、製造業の変革を促進するため、今後4年間で15億オーストラリア・ドル(約1,140億円、豪ドル、1豪ドル=約76円)を投資する「近代製造業戦略(Modern Manufacturing Strategy外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。

この戦略は、製造業をスケールアップし、競争力と強靭(きょうじん)性を高め、将来にわたって雇用を創出することを目指すもので、3つのパートから成る。まず、戦略の中心となる「近代製造イニシアチブ」では、オーストラリアが強みを持つか、または優先度が高まっているとされる(1)資源技術や重要鉱物の加工、(2)食品・飲料、(3)医療用製品、(4)リサイクルやクリーンエネルギー、(5)防衛、(6)宇宙を優先分野として定め、産業界とともに分野ごとのロードマップを策定し、2年、5年、10年先の明確な目標を設定する。これら6つの分野で、企業間あるいは産学のコラボレーションによる大規模なプロジェクトや、アイディアの商用化、国内外の市場やサプライチェーンへの統合を支援するため、13億豪ドルを投資する。

「サプライチェーン強靭化イニシアチブ」では、1億720万豪ドルを投じ、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって浮き彫りとなったサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性に対処する。個人用保護具などの医療物資をはじめ、食品、化学品、プラスチック製品などを対象に、国内外のサプライチェーンや国内の生産能力の見直しを行い、企業によるサプライチェーンの構築や強化を支援する。

さらに、2019年に設置した「製造業近代化基金」に5,280万豪ドルを追加拠出し、優先分野における製造業が雇用を増やし、従業員の能力開発を行い、新たな技術に投資するために必要な資金を提供する。

モリソン首相は「製造業は、オーストラリア経済の未来、地域の繁栄にとって非常に重要であり、その他多くの産業の成功を支えている」と述べ、同戦略の重要性を強調した。

(住裕美)

(オーストラリア)

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