9月の米失業率は7.9%、5カ月連続低下も経済回復ペースは鈍化

(米国)

ニューヨーク発

2020年10月07日

米国労働省が10月2日に発表した9月の失業率は7.9%(添付資料図、表1参照)と、市場予想(8.2%)を下回った。新型コロナウイルスの影響で統計開始(1948年)以来の最高水準となった4月の14.7%から5カ月連続で減少したものの、労働参加率は低下しており、専門家は経済の回復ペースの鈍化を指摘している。

失業者数は前月から97万人減少した一方で、就業者数が27万5,000人増加した結果、失業率は前月(8.4%:2020年9月7日記事参照)から0.5ポイント低下した。労働省はプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で「失業率と失業者数のいずれも5カ月連続で減少したものの、2月と比較して失業率が4.4ポイント、失業者数が680万人多い」と指摘した。

失業者のうち、恒常的な失業者数は前月(341万1,000人)より34万5,000人増加して375万6,000人となった一方、一時解雇を理由とする失業者数は前月(616万人)より152万3,000人減少して463万7,000人となった。

労働参加率(注)は、就業者数と失業者数の合計値(労働力人口)が前月から69万5,000人減少したことに加え、働く意思のない非労働力人口が前月から87万9,000人増加した結果、前月(61.7%)から0.3ポイント減の61.4%となった。

こうした中、平均時給は29.47ドル(前月:29.45ドル)となり、前月比0.1%増(同:0.3%増)と2カ月連続で増加した。前年同月比でも4.7%増(同:4.6%増)となっている。

9月の非農業部門の雇用者数の前月差は66万1,000人増となったが、市場予想(85万人増)を下回るとともに、前月(148万9,000人増)より増加幅が大きく縮小した。主に、政府部門で州・自治体政府の教育分野での雇用が20万人超減少したこと、連邦政府による国勢調査(センサス)のための一時的雇用が終了したことが増加幅縮小に寄与したとみられる。

8月から9月にかけての雇用増減の内訳をみると、財部門が9万3,000人増で、うち製造業全体では6万6,000人増となる。輸送用機器(1万5,300人増)と一般機械(1万3,800人増)での増加が目立った。サービス部門は78万4,000人増となり、増加幅の大きい業種としては、娯楽・接客業(31万8,000人増)、小売業(14万2,400人増)、対事業所サービス(8万9,000人増)、運輸・倉庫業(7万3,600人増)などが挙げられる(添付資料表2参照)。

米銀大手ウェルスファーゴのシニアエコノミストのサラ・ハウス氏は「労働参加率の低下は今後の労働市場の見通しにとって紛れもなく悪い兆候」とし、経済全体の回復を遅らせる可能性があると指摘している(ブルームバーグ10月2日)。

(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。

(磯部真一)

(米国)

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