米国からの10億ドル融資枠で合意、ファーウェイはAI技術支援を発表

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年10月30日

ブラジルの10月20日付の「アジェンシア・ブラジル」紙によると、米国連邦輸出入銀行とブラジル経済省は同日、対ブラジル投資の促進などに関する覚書(MOU)に署名した。MOUには、通信(5Gをはじめとした次世代移動通信システム)やエネルギー、インフラ、ロジスティクス、鉱業、製造業向けに同行が10億ドルの融資枠を設定することが盛り込まれた。署名したパウロ・ゲデス経済相は、ブラジル政府が民営化を進めるこれら分野に対する「的を得たタイミング」の合意と述べている。

しかし、複数紙の内容を総合すると、両国による今回の合意は、2021年に予定されているブラジルの5G周波帯の入札に備え、中国通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ)の参入を警戒するためのものだとする見方が強い。これに対して、在ブラジル中国大使館は同日の公式ツイッターで、10月19、20日に開催された2020米国・ブラジル・コネクトサミットからの一連の動きと併せて、中国政府は決して安全保障上に影響を与えるつもりはなく、ブラジルと持続可能で相互補完的な関係構築を図っていると強調した。

ブラジルにおけるファーウェイの直近の動きとしては、9月16日、ブラジル太陽光発電事業者のリオアウトが運営するパライーバ州コレマス太陽光発電所の拡大計画に、太陽光発電の安定的な運用管理と保守点検のための人工知能(AI)技術の提供についての発表が挙げられる。リオアウトは独立系発電事業者として、国家電力庁(ANEEL)から、発電出力30メガワット(MW)の発電所を10基運営する許可が与えられている。2019年には既に2基の発電所が稼働開始しており、2020年9月17日にはジャイール・ボルソナーロ大統領も出席して、第3発電所の開所式が行われた。現時点までの投資総額は4億5,000万レアル(約81億円、1レアル=約18円)。

ファーウェイ・ブラジル代表事務所は、建設が今後進んでいく第4から第8発電所に同社のAI技術を導入する。これにより、LCOE(注)のコストを5%削減し、エネルギー効率を2%向上させることに貢献する。リオアウトの創業者ラファエル・ブランダン氏は、同社の代表団が中国を訪問し、ファーウェイの技術の詳細やブラジルでの適用可能性について検討した上で両社が合意に至ったと説明した。

ファーウェイ・ブラジル代表事務所の孫宝成最高経営責任者(CEO)は「ファーウェイは、情報通信技術(ICT)や電子機器、エネルギーなどの分野で唯一のリーダー的企業であり、同社の技術により、最先端のICTを活用した新たなデジタルエンジン創造のための5G技術、AI、太陽光発電エネルギーの統合が可能になる」と述べている。

(注)LCOE(均等化発電原価)とは発電量当たりのコストのこと。

(古木勇生、エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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