世界のサービス貿易、第2四半期に新型コロナで3割減

(世界)

国際経済課

2020年10月27日

WTOは10月23日、2020年第2四半期(4~6月)のサービス貿易額(輸出入平均)の伸び率は前年同期比30%減(注1)だったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響により、四半期別では金融危機発生以降で最大の落ち込みを記録した2009年第2四半期(17%減)を大きく上回る減少幅となった。

地域別にみると、輸出ベースでは北米が前年同期比32%減、アジアが29%減、欧州は26%減だった。また、速報値に基づく推計値では、中南米は46%減、後発開発途上国は60~65%減となる。

項目別にみると、「旅行」と「輸送」の減少が顕著だった(注2)。「旅行」(国際観光支出)は新型コロナや関連措置による打撃を強く受け、前年同期比81%減となった。「輸送」は31%減と、金融危機下の2009年(29%減)を上回る減少幅になった(注3)。WTOは「輸送」の急減について、主に旅客輸送の制限と海外旅行需要の世界的縮小によってもたらされたと分析している。

その他の項目については、パンデミックの影響の程度は異なるものの、「建設」(前年同期比25%減)や「音響映像・芸術・娯楽サービス」(14%減)など、物理的近接性を伴う項目は貿易が急減した。「建設」と結び付きが強い「建築・エンジニアリングサービスおよびその他のビジネスサービス」も11%減となった。また、多くの国で工場生産が停止したことにより、「製造・修理サービス」も22%減だった。

さらに、経済状況に関する不確実性から、「研究開発サービス」は前年同期比12%減となった。国別にみると、研究開発サービスの対世界輸出シェアが大きい米国は8%減、EUでは11%減だった(注4)。「金融サービス」は1%減だった。同サービスは、金融危機下の2009年第1四半期に20%減少したが、新型コロナによる影響は限定的だった(注5)。

一方で、「コンピュータサービス」は2020年第2四半期に前年同期比4%増と、貿易が増加した唯一の項目になった。コンピュータサービスの貿易は、過去10年間で急速に拡大してきたが、デジタル化の需要拡大により伸び率がプラスを維持した。WTOは、新型コロナによるパンデミックを受け、同サービス拡大の潮流は一層加速すると指摘した。

(注1)原資料では小数点以下の表記がない。以下同様。

(注2)「旅行」と「輸送」を合計すると、サービス貿易の43%を占める。

(注3)WTOは、2009年の「輸送」の減少は、海上貨物輸送の急減によるもので、新型コロナによる影響を受けた、2020年第2四半期とは要因が異なると指摘している。

(注4)2019年の世界の研究開発サービス輸出に占める米国の割合は25.1%、EUは41.3%。

(注5)WTOは金融サービス輸出の伸び率について、ドル高のために過小評価されていると指摘している。一例として、EU域内の金融サービスの取引は、ユーロベースで2%増である一方、ドルベースでは停滞を示した。

(柏瀬あすか)

(世界)

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