金融口座の国際自動交換制度、開始2年後の状況

(スイス)

ジュネーブ発

2020年10月16日

スイス連邦国税庁(FTA)は10月9日、金融口座の国際的な情報交換制度(AEOI)の運用状況を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

当局間で口座情報を交換することによりグローバルな課税基盤の侵食や回避を防止する重要性は従来、国際的に認識されており、2009年4月のG20首脳会議は「銀行の守秘の終わり」を宣言している。その後、G20とOECDでの議論が進み、両者の支援の下で「税の透明性と情報交換に関するグローバルフォーラム(グローバルフォーラム)」が設立された。スイスもグローバルフォーラムの議論に貢献し、フォーラムが定めた基準にのっとり、各国で金融口座情報の自動交換が始まった。スイスでは、長らく金融業界における顧客情報の厳重な守秘で国内外の富裕層資産を集めてきたが、当局間の情報交換に向け多国間条約の批准と国内法整備を行い、2017年1月に関連法を施行し、2018年秋に他国との情報交換を開始した。

今回、FTAは前回発表の2019年10月以降のAEOI運用状況について発表した。AEOIへの参加国は86カ国になり、スイスは自国に関連する81万5,000件の金融口座情報を受け取り、一方で、情報保護と機密性に関する国際的な要件をまだ満たしていないか、データを受け取らないことを選択した20カ国を除く66カ国に対して、310万件の口座情報を伝送したとしている。前年と比べると、スイスは同数の口座情報を伝送し、受け取った口座情報は前年の240万件から大幅に減少した。これは「新型コロナ禍」で技術的な問題が発生し、伝送が遅れている国が38カ国あるためで、これらの国からの情報は2020年末までには伝送される予定という。現在、AEOIのため、8,500の銀行、信託、証券会社などがFTAに登録している。情報交換を行った口座の資産情報等は明らかにされていないが、グローバルフォーラムの2020年6月の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2019年におけるフォーラム加入国97カ国間で交換された情報は8,400万口座、資産額は10兆ユーロに上るとのことだ。

グローバルフォーラムでは、AEOIや当局の求めに応じた金融口座情報の交換、その実施に当たっての金融機関や当局の相互レビューを行っている。スイスもフォーラムのレビュー結果を踏まえ、デューデリジェンスや金融機関に対する規制の強化を行うため、国内法改正を予定している。

(和田恭)

(スイス)

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