保守派のバレット氏、米上院の承認を経て最高裁判事に就任

(米国)

ニューヨーク発

2020年10月28日

米国上院は10月26日、ドナルド・トランプ大統領が連邦最高裁判事に指名したエイミー・コニー・バレット氏の人事案を52対48の賛成多数で承認した。トランプ氏は同日夜にホワイトハウスでバレット氏の就任宣誓式典を開催し、同氏は正式に最高裁判事に就任した。これにより最高裁判事の構成は保守派6人、リベラル派3人となった。

大統領選結果の最高裁判断に影響も

大統領選挙の1週間前という異例の時期に行われた上院での承認投票では、共和党からスーザン・コリンズ議員(メーン州)のみが反対に回った以外は、党派に沿った投票結果となった。上院少数党の民主党は、終身制の最高裁判事に48歳のバレット氏が就任することで、最高裁の判決が長期的に右傾化することを懸念し、故ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の後任人事は今回の選挙で勝利した大統領が行うべきと主張していた。ジョー・バイデン民主党大統領候補も討論会で同様の懸念を示していた(2020年10月1日記事参照)。

また、バイデン氏は10月24日にペンシルベニア州で遊説を行った際に、有権者の関心の高い医療制度に関してバレット氏が過去にオバマケアに否定的な見解を示したことを引き合いに出し、同氏が承認されれば「530万人のペンシルベニア州民を含む1億人の米国民が既往症に対する保護を失う」と指摘した。

一方、トランプ氏と議会共和党は今回の成果を、個別の政策分野で共和党色を強めることだけでなく、11月3日の大統領選挙・議会選挙の結果にもつなげたい考えだ。トランプ氏は9月に、大統領選の結果が最高裁の判断に委ねられる可能性に触れた上で、判事が9人そろっていることが重要との見解を示している。

州によっては郵便投票の有効期限などについて訴訟が既に起きており、その判断が最高裁に委ねられている。支持者の郵便投票率が高いとされる民主党側がより長い有効期間を求める一方、選挙当日の投票所での高い投票率が見込まれる共和党側がそれを阻止するという構図だ。例えば、ウィスコンシン州では民主党と市民団体が、選挙当日までの消印がある郵便投票の受領締め切りを選挙当日から6日間延期するよう求めており、最高裁までもつれ込んだが、最高裁は10月26日に5対3で却下の判断を出した(注)。このほか、激戦州とされるノースカロライナ、ペンシルベニアの2州でも同様の訴訟が展開されており、バレット氏の判断が結果を左右する可能性もある。

なお、最高裁判事の定数に憲法上の制限はなく、民主党が今回の選挙で政権と上院過半数を獲った場合、判事の定数を増やすのではとの見方がある。この点について、バイデン氏は明確な姿勢は示していないが、もし選挙で勝利した場合、最高裁制度を研究する超党派の委員会を立ち上げ、180日以内に改革案を提案させる方針を10月22日に明らかにしている。

(注)ウィスコンシン州の州法では、郵便投票は選挙当日の午後8時まで必着とされている。

(磯部真一)

(米国)

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