第3四半期の新車販売、前年同期比9.6%減、高価格帯の回復で減少幅は縮小

(米国)

ニューヨーク発

2020年10月07日

モーターインテリジェンスの発表(10月1日)によると、米国の2020年第3四半期(7~9月)の新車販売台数は、前年同期比9.6%減の390万8,265台となった(添付資料表1参照)。新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響により大幅に落ち込んだ第1四半期(1~3月)の12.3%減、第2四半期(4~6月)の33.4%減に比べて、減少幅は縮小した。

部門別にみると、乗用車が前年同期比21.8%減の92万4,856台、小型トラックが5.1%減の298万3,409台となった。中でも、ピックアップトラックとスポーツ用多目的車(SUV)はそれぞれ2.5%減、4.6%減と比較的小幅の減少にとどまった。ガソリン安や低金利の自動車ローンなどが押し上げ要因となり、特に、新型コロナによる経済的影響が少ない消費者の間で販売が回復しているとみられる。また、在宅時間が延びたことにより、余暇を過ごす家庭環境を充実させるために、大型車両の好調な販売が続いているとの見方もある。なお、1台当たりの平均車両販売価格は、在庫不足の影響もあって、データの確認できる2013年以降で第3四半期としては過去最高の3万6,453ドルとなった(ALG調べ)。

主要メーカー別では、起亜を除く全てのメーカーが前年同期比で販売が減少したものの、各社とも第2四半期に比べ減少幅は縮小した(添付資料表2参照)。起亜は2020年に入って市場投入したクロスオーバーSUV(以下、CUV)「セルトス」や乗用車「K5」など新型モデルが好調で、前年同期比3.9%増となった。一方で、日産は人気モデルのCUV「ローグ」や乗用車「アルティマ」などが大きく落ち込んだことから、減少率は主要メーカーで最大の32.4%減となった。

今回の結果に関し、自動車関連サービス企業であるコックス・オートモーティブ(以下、コックス)のエグゼクティブ・アナリストのミシェル・クレブス氏は「第3四半期の自動車販売は、販売店と新規購入者の双方が回復力を示した。新車の購買層は新型コロナや高失業率、経済的な不確実性にもかかわらず、必要性や欲求に基づいて購入している」と分析している(同社プレスリリース10月1日)。一部の消費者が牽引するかたちで自動車販売が回復する中、一方で販売店からは、政府の刺激策がなければ賃金水準の低い顧客が市場から締め出される、と懸念する声も聞かれる(「ウォールストリート・ジャーナル」紙10月1日)。

今後の見通しに関して、市場調査会社JDパワーのデータおよび分析部門責任者のトーマス・キング氏は「注目すべき追い風の1つは、新型コロナ下でリース期間を延長している顧客による車両購入が販売増に寄与する可能性があることだ」と述べた(「オートモーティブ・ニュース」10月1日)。一方で、コックスのチーフエコノミストのジョナサン・スモーク氏は、新型コロナの感染増加や大統領選挙による政治的不確実性が続くことで、消費者心理が衰退し続ける可能性があると指摘。さらに、財政支援の先細りで景気が勢いを失い、「(第3四半期の)好調な販売ペースが続くことは期待できない」と厳しい見方を示した(同社プレスリリース10月1日)。同社は2020年の年間販売台数を1,390万台(2019年実績:1,706万台)と予測している。

(大原典子)

(米国)

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