ビスカラ大統領の罷免決議案を否決

(ペルー)

リマ発

2020年09月24日

ペルー議会は9月18日、9月11日に提出されたマルティン・ビスカラ大統領の罷免決議案の審議を行った。審議後の採決の結果、同決議案は反対多数により否決された。同決議案は、議会の監査委員長を務めるウニオン・ポル・エル・ペルー(ペルーのための連合:UPP)党所属のエドガー・アラルコン議員が、ビスカラ大統領と側近の打ち合わせ内容が録音されている偽証疑惑テープ(注)をマヌエル・メリーノ・デ・ラマ議長に提出し、同議長がこれを議会で再生した結果、幾つかの党からビスカラ大統領の罷免決議の提案があったことに端を発している。

審議に先立ち、ビスカラ大統領は急きょ議会において自らの潔白を訴えると同時に、本件の審議権限は議会でなく検察にあるべきと述べた。その後、約10時間におよんだ議会審議の末、同決議案は賛成32票、反対78票、棄権15票で、可決に必要な賛成数(87票)に届かず、否決された。賛成票の多くを投じたのは、主に左派のアラルコン議員所属のUPP党(13票)と、フレンテ・ポプラール・アグリコラ・フィア・デル・ペルー(ペルー農業人民前線:FREPAP)党(15票)で、決議案の採択を推進したアクシオン・ポプラール(人民行動:AP)党とアリアンサ・パラ・エル・プログレッソ(進化のための同盟:APP)党の両党は最終的には反対に転じた。

なお、アラルコン議員は、前職の会計検査院監査官時代の公金横領や着服など6つの汚職疑惑について検察の捜査を受けている。さらに、そのうちの3つについては既に検察から起訴されており、議会に対して同議員の不逮捕特権の剥奪要請が出されている。そのため、一部の党からは、同議員が監査委員長を務めることを疑問視する声も少なくない。

民間調査機関IPSOSが9月12日に行った全国都市部でのアンケート調査によると、ビスカラ大統領の支持率は57%と、3月の緊急事態宣言直後の支持率に比べると30ポイント下がったものの、メリーノ議長(19%)と議会(24%)の支持率を大きく上回っている。また、同アンケート調査では、79%の回答者が大統領の続投を望んでおり、最終的にはこのような世論が影響したのではないかとみられる。

(注)文化省の顧問として、政府が契約したリチャード・シスネーロス氏とビスカラ大統領の癒着疑惑について、大統領側は本人とは面識があるが会議の場を設けたことはないと証言した一方で、本件に関する大統領府内での議会監査委員会に対する発表内容の打ち合わせを録音したテープが提出され、大統領に対する信用疑惑が浮上している問題。

(設楽隆裕)

(ペルー)

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