ベネクス、EPAを戦略的に活用し欧州市場を開拓

(EU、スイス、中国、韓国、台湾、日本)

欧州ロシアCIS課

2020年09月25日

2005年に創業したベネクス(所在地:神奈川県)は「上質な休養」のサポートをコンセプトとしたオリジナル機能性糸を用いた「リカバリーウェア」などの製造販売を行っている。国内販売のほか、欧州、中国、韓国、台湾でも事業を展開している。ジェトロは2020年9月9日、同社の片野秀樹副社長に経済連携協定(EPA)の利用状況や成果について聞いた。

2014年に日本の100%出資子会社をドイツへ設立し、欧州でのビジネスをスタート。当初、国内産製品の輸出を行ったところ、衣類の関税(12%)に加え、付加価値税(19%)の負担を求められた。仕入れ価格における1割以上の関税負担の重さを避けるべく、糸(関税4%)の原料輸出に切り替え、現地生産をスタート。このような経緯から、ベネクスは現状、日EU・EPAを活用してリカバリーウェアの原料となる糸を、リトアニア向けに輸出している。輸出された糸は、リトアニアの協力工場で縫製され、最終製品として欧州市場で販売されている。最終製品の製造・販売は、ドイツとスイスに販売拠点を持つ現地パートナー企業が担う。

2019年2月から日EU間でEPAが発効したのを契機に、ベネクスは欧州向け輸出でEPAの利用を開始した。EPAの利用のきっかけについて、片野氏は「ジェトロからの情報提供がきっかけで日EU・EPAの存在を知り、利用を決めた」と語る。

EPA利用に当たっては、社内の2人で分担している。1人は海外拠点とのやりとりを、もう1人は原産地証明など各種書類の保管を担っている。EPA活用のメリットについて、片野氏は「関税削減は大きなメリット。販売競争力の強化につながり効果を実感している。さらに加えて、現地生産を決めた2014年当時に関税が撤廃されていれば、国内産製品の輸出を続けていたかもしれない」と語った。

今後の欧州以外の新規取引に目を向けているベネクスは、EPAの戦略的な活用により、国内産製品の輸出による初期段階の負担軽減などのメリットを検討する予定だ。

写真 リカバリーウェア(ベネクス提供)

リカバリーウェア(ベネクス提供)

(宮下恵輔)

(EU、スイス、中国、韓国、台湾、日本)

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