日立、2020年自由化のスペイン高速鉄道向け車両を共同受注

(スペイン)

マドリード発

2020年08月19日

日立製作所は8月12日、スペインの高速鉄道で運行予定の高速車両23編成を旧イタリア国鉄系トレニタリアから受注したと発表した。カナダのボンバルディアとの共同受注で、契約額は7億9,700万ユーロ。

受注モデルは、営業最高時速が欧州最速級360キロの「フレッチャロッサ1000」(8両編成)で、乗車定員は約460人。トレニタリアとスペインの地域航空会社の合弁による鉄道運営会社イルサ(ILSA)が、スペイン高速鉄道網のマドリード~バルセロナ路線、マドリード~バレンシア/アリカンテ路線、マドリード~セビリア/マラガ路線で2022年から同モデルでの営業運転を開始する予定だ。

新型コロナで実質的な自由化は2021年春に

政府は、EU域内の国内旅客鉄道の市場開放期限である2020年12月に向け、2019年に高速鉄道網の主要3路線について10年間の営業権の入札を実施。2019年11月末にイルサのほか、スペイン国鉄(レンフェ)、フランス国鉄(SNCF)系リエルスフェラを運営事業者として選定した。

実際の営業開始は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により数カ月の遅れが出る見込みだ。リエルスフェラは2021年3月末のイースター連休に運行開始予定と報じられている。イルサは車両の製造・認証の関係で、当初より2022年初頭からの営業運転を表明しているとのこと。また、「スペイン高速鉄道(AVE)」を運営してきたレンフェは、自由化に先立ち4月から格安高速鉄道「アブロ(AVLO)」の運行を開始する予定だったが、これを無期限で凍結したと報じられていた。

鉄道自由化で生まれた参入チャンス

スペインの高速鉄道は路線総延長では3,456キロと中国に次ぐ世界2位だが、格安航空の台頭や道路網の発達により、自動車・航空輸送に対してダイヤの柔軟性や価格面での優位性を打ち出せず、営業距離当たりの利用者数は周辺国と比べて著しく少ないとされている。自由化により、運行本数は従来の1日99本から167本に増便され、運賃やサービスの幅も広がるため利用者増が期待される。

また、レンフェが運営するスペイン高速鉄道(AVE)向けの車両調達では、これまでスペイン国内に車両組み立て拠点を持つメーカーがもっぱら採用されており、2016年の大型入札では国内大手タルゴの落札に対し、他国系メーカーが不服申し立てや訴訟を起こすなどの事態もあった。自由化で国外の運営事業者が参入したことにより、国外車両メーカーにとっての商機も拡大したといえる。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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