マリでクーデター、大統領が辞任

(マリ)

アビジャン発

2020年08月20日

アフリカ西部のマリで8月18日、軍の一部勢力がクーデターを起こし、ブブ・シセ首相らとともに身柄を拘束されたイブラヒム・ブバカール・ケイタ大統領は19日早朝、国営テレビで演説し、自身の即時辞任と政府の退陣、国民議会の解散を発表した。

反乱軍のイスマエル・ワゲ空軍参謀副長は国営テレビで声明を発表、「国民と歴史を前に責任を引き受けることを決断した」と述べた。暫定政権として、アシィミ・ゴイタ大佐を議長とする国民救済委員会(CNSP)を設置、適切な時期の民政移管と選挙実施を約束し、国内全ての政治勢力や社会層に参加を求めた。野党連合のM5-RFPは19日、ケイタ大統領の退陣を歓迎する声明を発表。民政移管プロセスへ参加する意向を示した。

ケイタ氏は2013年の大統領選で当選し、2018年に再選されたが、近年は政権腐敗や経済失政、治安の悪化などに反発する声が国民の間で高まり、6月以降、退陣を求める大規模な抗議活動が断続的に起きていた。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は、ケイタ大統領と野党間の仲裁に乗り出し、和解政府の発足に向けて協議していたが、合意には至らず、国内情勢の緊張が高まっていた。

ECOWASは19日、加盟15カ国がマリとの国境を閉鎖、貿易・資金取引を停止し、ECOWASの全ての意思決定機関からマリを除名した。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、拘束されたケイタ大統領とシセ首相らの「無条件の即時解放」と「憲法秩序の即時回復」を要求した。AFP通信によると、国連安全保障理事会はフランスとニジェールの要請を受け、国連本部で緊急会合を開く予定だ。アフリカ連合(AU)はマリの加盟国資格を停止した。サヘル地域のテロ対策でマリに兵士を展開するフランスや、国境を接するアルジェリアも強く非難した。

AFP通信などによると、首都バマコではクーデター直後に市民の一部が暴徒化し、政府関連の建物が放火されるなどしたが、19日朝には状況は落ち着きつつあり、市内に兵士の姿は見られないという。官公庁や銀行などは前日から閉鎖、国内全土に戒厳令が敷かれ、陸路・空路の国境封鎖、夜間外出禁止令が発出されている。

マリでは2012年にも軍部がクーデターを起こし、当時のアマドゥ・トゥマニ・トゥーレ政権が崩壊。混乱に乗じて北部で活発なイスラム過激派が勢力を伸ばし、旧宗主国フランスが掃討のため軍事介入した。

(渡辺久美子)

(マリ)

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