欧州委、アルストムによるボンバルディア鉄道部門の買収を条件付きで承認

(EU、フランス)

ブリュッセル発

2020年08月04日

欧州委員会は7月31日、フランスの重電大手アルストムによる、カナダの輸送機器大手ボンバルディアの鉄道部門でドイツに本社を置くボンバルディア・トランスポーテーション(以下、ボンバルディア)の買収を条件付きで承認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

アルストムとボンバルディアは鉄道車両の分野でともに世界的大手であり、各種鉄道車両や鉄道信号システムなどの幅広い製品で競合関係にある。欧州委は、当初買収計画に対して、特に超高速鉄道・都市間鉄道の車両および都市間交通の信号システムにおいて、競争法上の懸念を示していた。今回、欧州委は、アルストムによる是正措置の提出を受け、競争法上の懸念が払拭(ふっしょく)されたとし、当該是正措置への完全な順守を条件として、アルストムによるボンバルディアの買収計画を承認した。

日立による英国「HS2」計画への共同応札は維持

是正措置には、ボンバルディアが日立と共同開発する超高速鉄道車両V300 ゼフィロ(Zefiro)のボンバルディアの寄与分や関連する知的財産権を、日立へ移転することが含まれる。これは、超高速鉄道車両の製造において欧州最大規模である英国の「HS2」計画に、ボンバルディアと日立が現在共同で応札しているためだ。さらに、アルストムも同計画に応札していることから、適切な競争環境を整備するために、アルストムには同計画におけるボンバルディアと日立の共同応札を維持する一連の措置が求められる。

是正措置にはほかに、それぞれアルストムとボンバルディアの都市間鉄道車両のブランドであるコラディア(Coradia)とタレント3(Talent 3)、および関連するフランスとドイツの生産拠点の一部売却、車両信号システムに関する情報の競合他社への一部提供などが含まれる。

鉄道車両大手の合併をめぐっては、欧州委は2019年2月、アルストムとドイツのシーメンスとの鉄道事業の合併を不承認とした。EU関連ニュースの「ユーラクティブ」など現地報道によると、これを受けフランスやドイツ政府は、中国や米国企業との国際的な競争の激化を念頭に、大手企業間の合併による「欧州王者」企業を認めることなど、欧州企業の競争力維持を目指す産業政策の視点を、競争法の判断に加味すべきと主張しており、近年、EU競争法の見直しの議論が進んでいるという。

(吉沼啓介)

(EU、フランス)

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