欧州委員会のホーガン委員(通商担当)が辞任

(EU、アイルランド)

ブリュッセル発

2020年08月28日

欧州委員会のフィル・ホーガン委員(通商担当)は8月26日、ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長に同日夜に辞表を提出したとする声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

アイルランド訪問時の新型コロナウイルス対応が引き金に

フォン・デア・ライエン委員長宛てにホーガン氏が提出した資料によると、同氏は7月31日から8月21日にかけて出身国アイルランドを訪問した。19日に同氏が参加したゴルフ関連のイベントが同国の新型コロナウイルス対応ルールに合致したかたちで実施されていなかった点などが問題となった。同じイベントに参加したアイルランドの閣僚が既に引責辞任しており、ホーガン氏への風当たりが強まっていた。

ホーガン氏は「私はいかなる法も侵害していないが、公僕として、新型コロナウイルス対応ガイドラインを一層厳格に順守すべきだった」と反省の意を示し、この問題が「今後の欧州委員としての職務に支障を来すことは明らかだ」と辞任の理由を説明した。

辞任に当たり、通商担当という立場からのメッセージも表した。「EUは引き続き、開かれた、公正でルールに基づく多国間貿易制度の中心に立ち、改革に取り組まなければならない」と、自由貿易を推進してきた自身の信条を強調した。さらに、英国との将来関係について「EU加盟国、とりわけアイルランドが先導的な役割を担って、英国と相違点を乗り越え、公平で相互に利益をもたらす持続可能な貿易合意に達することを願う」と述べ、アイルランド出身者としてこの問題に最後まで取り組むことができなかった無念さもにじませた。

辞表を受理したフォン・デア・ライエン委員長は、通商担当としての、および前欧州委員会での農業担当としてのホーガン氏の功績に謝意を示した。アイルランドは今後、自国からの新委員候補を指名するが、各委員の担当の決定は委員長の専権事項であり、新委員が通商担当を担うとは限らない。同委員長は27日、当面はバルディス・ドムブロフスキス上級副委員長(経済総括、金融サービス政策担当)が暫定的に通商担当を兼任することを明らかにした。

(安田啓)

(EU、アイルランド)

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