米石油大手シェブロン、ノーブル・エナジーを50億ドルで買収

(米国)

ヒューストン発

2020年07月22日

米国石油大手シェブロン(本社:カリフォルニア州サン・ラモン)は7月20日、独立系石油ガス開発企業のノーブル・エナジー(本社:テキサス州ヒューストン)を買収することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の買収は、ノーブル・エナジーの全株式取引額の50億ドル相当をシェブロンが買い取る株式交換方式で行う(注)。

この取引時におけるノーブル・エナジーの企業価値は負債も含めて130億ドルとされているが、同社の負債額は87億3,700万ドル(3月31日時点)に及ぶため、シェブロンはこの債務を負うことになる。

一方、シェブロンはこの買収で、コロラド州のデンバー/ジュレスバーグ盆地(DJ盆地)、テキサス州とニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地の油田・ガス田を獲得する。DJ盆地は2019年にシェブロンがアナダルコの買収を試みた際にも狙っていたと言われている地域で、ノーブル・エナジーとアナダルコが主要な生産者だ。また、DJ盆地を形成するニオブララ堆積層は、リグ1基当たりの新油井の生産量がイーグルフォードやバッケンなどの堆積層に次いで多い。

さらに、シェブロンは原油・ガスの輸送を担う中流部門が大きくなく、パーミアン盆地で現在操業する生産者に共通の課題であるメキシコ湾岸まで原油・天然ガスを輸送するパイプライン不足を克服する必要に迫られている。

特に、ガス輸送はパイプラインでなければ採算が合わず、現在、パーミアン盆地では多くの事業者が油井から産出される随伴ガスをフレアとして燃やしており、二酸化炭素排出の観点からも非難の対象になっている。今回の買収でノーブル・エナジー傘下のノーブル・ミッドストリーム・パートナーズとの強い関係を築き、パーミアン盆地にとどまらず、米国内の原油・ガスのパイプラインによる輸送課題を解消できれば、買収の効果は大きい。

今回獲得するパーミアン盆地の油田とエジプトのガス田は、シェブロンが所有している油田・ガス田とも隣接しており、双方の施設を供用することで施設投資額や維持管理費の節減にもつながる。

そのほか、イスラエルのリバイアサン、タマール、赤道ギニアの洋上ガス田の獲得により、シェブロンはこれら地域における地位確立と、費用対効果の良い天然ガスやコンデンセートを生産する拠点を得ることができる上、洋上生産技術に強い両社のシナジーも期待できる。

最終的にシェブロンが保有する鉱区の確認埋蔵量は買収前後で、換算値1バレル当たり5ドルを下回るコストで生産できる量が18%増加する。また、合併から1年以内の相乗効果は3億ドル、両社の2020年予算は合併前の合計額に比べ、合併後は総額で30%削減を見込む。

既に両社の取締役会は満場一致で買収に合意しているが、ノーブル・エナジー側は今後、株主の承認を得る必要がある。

今回の買収における背景については添付資料参照。

(注)ノーブル・エナジー社の株式は7月17日までの10日間の平均株価に12%の割り増しを追加した10.38ドルとして取引されるため、ノーブル・エナジーの株主は同社の1株につきシェブロンの0.1191株を受け取ることになる。また、今回の買収完了時にシェブロンは約5,800万株を発行してこの費用を賄う予定だ。

(中川直人)

(米国)

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