EC取引を管理する行政機関やルールを整備へ

(フィリピン)

マニラ発

2020年07月28日

フィリピン下院の貿易投資委員会は7月20日、「インターネット取引に従事する事業者と消費者を保護するために電子商取引局を設置する法案(下院6122号法案)」を承認した。

起案者のバレンズエラ・ガチャリアン委員長は法案の趣旨について、「貿易産業省内に設ける電子商取引局は、通信販売や旅行手配サービス、デジタル・メディア・プロバイダー、ライドシェアサービス、デジタル金融サービスなど、BtoB、BtoCを問わず、インターネットを介した全ての商取引を所管する。ただし、消費者間の取引には関与しない」と説明している。また、貿易産業省が電子商取引(EC)サイト向けに取引の信頼性と安全性を認証するマーク「eCommerce Philippine Trustmark」を発行する。この法案は今後、下院、上院、両院協議会で審議される。

フィリピンのEC市場はGDP比で見れば1.6%にすぎないものの、着実に成長しつつある。越境ECもいまだ黎明(れいめい)期にあるが、シンガポールのラザダやショッピーなど大手ECサイトが進出し、中国や韓国の商品などを多数販売している状況だ(「フィリピン国における越境EC市場の最新動向と今後の可能性について」PDFファイル(818KB)参照)。

EC取引に対する課税ルールの整備も急務となっている。ジョーイ・サルセダ下院議員は5月19日、「デジタル事業収入に対して課税するために内国歳入法の一部を改正する法案(下院6765号法案)」を提出した(2020年5月25日記事参照)。ジェトロが税務会計コンサルタントに確認したところ、同法案は7月27日開会の国会で改めて審議されるが、二重課税や非課税を招きかねない内容を含んでいるため、政府がまず他国とのルールを改定した上で、国内法を施行することが望まれるという。例えば、現在の租税条約では、「海外の事業者がフィリピン国内に駐在員事務所やフィリピン居住者の代理人を持たない場合、フィリピン国内に(課税対象となる)恒久的施設(PE)はない」と見なされるが、下院6765号法案は「フィリピンでデジタル・サービスを提供する者は、フィリピン国内に源泉徴収の代理人として駐在員事務所を開設するか、フィリピン居住者の代理人を指定すること」を求めている。従って、税務会計コンサルタントは、現状のままでは同法案は「PEなければ課税なし」を原則とする租税条約と矛盾することになると指摘する。

(石原孝志)

(フィリピン)

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