韓国の製造業、「リショアリング」に関心なし

(韓国)

ソウル発

2020年07月03日

新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、各国政府の「リショアリング(注1)支援」が注目されている。韓国政府も、6月1日に発表した「今年下半期(7~12月)の経済政策方向」の中で、新型コロナウイルスの影響を受けた国内市場への支援策の一環として、海外から国内回帰する企業への税制支援を拡充し、認定条件を大幅に緩和することを表明した。しかし、韓国の製造業の大半は、生産拠点の国内回帰にメリットがない、と判断している。

韓国の中小企業中央会が6月26日に発表した「中小企業のリショアリングに関する意見調査(注2)」によると、中国とベトナムに生産拠点を持つ企業の9割以上は、国内回帰を検討していないと回答した。国内回帰に対する意向の有無に関し、76%の企業が「意向なし」、16%が「現地事情が悪化した場合に考慮」と回答した。理由としては、(1)韓国国内の高い生産コスト(63.2%)、(2)現地内需市場へのアクセス(25.0%)、(3)韓国国内の各種規制(9.9%)などが挙げられた。

国内回帰の「意向あり」と回答した企業は、わずか8%で、全てが中国に生産拠点を持つ企業だった。理由として、(1)現地の生産コスト上昇(50.0%)、(2)現地生産製品の低い品質(37.5%)、(3)「Made in Korea」イメージの活用(31.3%)などを挙げた。また、リショアリングに関連し、韓国政府に期待する支援策としては、(1)租税減免の拡大(32.5%)、(2)補助金支援の拡大(26.0%)、(3)労働規制の緩和(15.5%)、(4)環境規制の緩和(1.5%)を挙げた。

また、大韓商工会議所(KCCI)が6月22日に発表した韓国国内の製造業(308社)向けのアンケート調査結果でも、海外に生産拠点を持つ製造業のうち94.4%は「国内回帰の計画なし」と回答し、その理由として、(1)海外工場の低い生産コスト(58.3%)、(2)現地市場への進出(38.1%)などが挙げられている。

(注1)リショアリング(Reshoring)とは、主に製造業などにおいて、海外に移した生産拠点を再び自国へ移転すること。オフショアリングから戻すといった意味。

(注2)今回の調査は、中国とベトナムに現地法人を設立した韓国企業200社を対象として、6月12日から22日まで実施。

〔李丙鎬(イ・ビョンホ)〕

(韓国)

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