デジタル人材関連スタートアップが講演、ジェトロがウェビナー開催

(インドネシア)

ジャカルタ発

2020年07月28日

ジェトロは7月16日、「インドネシアのデジタル人材」と題したウェブセミナーを開催し、約120の日系企業が参加した。講師として、短期間でコーディング(注1)技術を習得できる初心者向けのブートキャンプを運営するハクティブエイト(Hactive8)の最高経営責任者(CEO)ロナルド・イシャーク氏と、人工知能(AI)を活用したスクリーニング技術でデジタル人材紹介事業を行うエクルート(Ekrut)の最高製品責任者(CPO)ニコ・クエステラ氏が登壇し、「新型コロナウイルス禍」におけるインドネシアのデジタル人材への需要や各社の今後の展望などについてプレゼンテーションを行った。

インドネシアのデジタル産業は今後も成長が期待されている。グーグルなどが2019年10月にまとめたレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、インドネシアの電子商取引(EC)産業の経済規模は2025年に820億ドルに達する見込みだ。また、調査会社のスタートアップ・ゲノムが6月に発表した世界150都市のスタートアップ・エコシステムに関するレポートでは、ジャカルタはインドのムンバイに次ぐ世界第2位の新興エコシステムとされた。しかし、インドネシアでのデジタル人材への急激な需要増加と、実際の人材の数には大きなギャップがある。ハクティブエイト、エクルート両社はそのギャップを埋めるべく活躍するスタートアップだ。

セミナーで、ロナルド氏は「2025年から2030年にインドネシアでは900万人のデジタル人材が不足する」と指摘した上で、スキルを身に付けたくても金銭的な理由で断念する人が多いことを問題点として挙げた。こうした問題を解決すべく、ハクティブエイトは所得分配契約(注2)を導入し、より多くの人にコーディングの学習機会を提供している。ニコ氏は、新型コロナウイルスによる不況でスタートアップがデジタル人材を解雇しているために、就職先を探すデジタル人材が増えたとする。また、企業側も厳選して人材を採用するようになっていると、「新型コロナウイルス禍」の状況を説明した。エクルートはこの時期にデジタル人材を自社のプラットフォームに登録してもらい、コロナ後に採用ニーズが高まった際に企業とマッチングができるよう準備を進めているという。

両社はそろって「日系企業との連携や投資を希望する」と述べ、ロナルド氏はさらに、自社で育成したデジタル人材を積極的に活用してほしいと訴えた。

(注1)ジャバスクリプトなどの言語を使い、ウェブデザインをブラウザ上で見えるかたちにするためにソースコードを記述すること。

(注2)所得分配契約(Income Share Agreement)は、米国で生まれた学校と学生の契約モデルの1つ。受講開始から卒業までの期間は受講費用が発生しない。代わりに、一定の条件を満たした場合に卒業後の収入から一定割合をスクールに支払う契約形態。

(デシー・トリスナワティ、山城武伸、上野渉)

(インドネシア)

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