5カ国・地域との投資関連協定が発効へ、日本側の国内手続き完了

(日本、世界)

国際経済課

2020年06月01日

参議院は5月13日の本会議で、5件の投資関連協定〔アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン、モロッコ、コートジボワール、ASEAN構成国〕を承認し、協定の効力発生に必要な日本側の国内手続きが完了した。前者の4カ国との2国間投資協定については、両国で必要な国内手続きが完了した旨を互いに通告することとなっており、外交上の公文の交換日の後、もしくは遅い方の通告が受領された日の後30日目に効力が生ずると定められている。日・ASEAN包括的経済連携協定第1改正議定書(AJCEP協定改正議定書)については、日本とASEAN構成国のうち少なくとも1カ国がその通告を行った日の属する月の後2番目の月の初日に通告済みの国の間で発効する。

投資関連協定は、相手国における自国の投資家と投資財産を保護し、安定的で予見可能性の高い投資環境の枠組みを整備するものだ。今回承認された協定はいずれも、参入後の内国民待遇や最恵国待遇、公正衡平待遇、不当な収用の禁止、送金の自由などの基本的な規律を含むとともに、国家対投資家間の紛争解決手続き(ISDS条項)を規定する(添付資料表参照、注1)。また、日・コートジボワール投資協定やAJCEP協定改正議定書では、投資許可など参入段階でも付属書で明示されたもの以外は内国民待遇や最恵国待遇などを保障する投資自由化に向けた規定も盛り込まれた。これにより、日本企業は相手国の国内企業や第三国の企業と同等の条件で投資参入をすることが保障される(注2)。

モロッコ以外の投資関連協定では、投資協定の実施運用、見直し、さらには投資環境の整備に向けた討議を行う合同委員会(AJCEP協定改正議定書の場合は「投資に関する小委員会」)の設置も明記された。合同委員会は締結国政府の代表者で構成するが、両締結国の同意があれば産業界の代表者なども参加が可能となる。これにより、民間企業も合同委員会で相手国の投資環境の改善などを要求できる制度が整えられた。

日本は現在までに51本の投資関連協定を78カ国・地域との間で署名済みまたは発効済みだ。今回承認された投資関連協定を含め、日本の直接投資残高(2018年末)に占めるこれらの国・地域の比率は約93%となり、日本の投資先国・地域のほとんどが投資関連協定によりカバーされることとなる。このほか、日本は現在、アフリカや中央アジア、中東、南米を中心に21カ国・地域と投資関連協定の締結に向けた交渉を行っている。

(注1)経済産業省はウェブサイト上で投資関連協定の各条項の解説と運用事例外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開している。

(注2)ただし、AJCEP協定改正議定書の投資章では、投資の自由化規律は、発効後に交渉を開始する留保表の結果を受けて有効となる。最恵国待遇についても継続協議となっている。

(山田広樹)

(日本、世界)

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