農業・電力は成長も2020年のGDPはマイナス成長の見通し、国際収支も悪化の懸念

(ラオス)

アジア大洋州課

2020年06月04日

アジア開発銀行(ADB)の根岸靖ラオス担当カントリーディレクターは5月29日、ジェトロが開催したウェビナー「コロナ禍におけるラオスの経済・財政見通し」において、2020年のラオスのGDP成長率がマイナス0.5%(封じ込めに3カ月かかる場合)~マイナス1.0%(6カ月の場合)になるとの見通しを発表した。ADBは4月3日時点でラオスのGDP成長率の見通しを3.5%としていたが(2020年4月16日記事参照)、感染拡大による影響が世界的に広範囲に及んでいるため、さらに下方修正されたかたちとなる(添付資料表参照)。

セクター別のGDP成長率は、農業セクターが干ばつからの生産回復、工業セクターのうち電力が大型ダムの商業運転開始により、それぞれ伸びる一方、その他の全てのセクターで落ち込むと予測した。工業セクターのうち、鉱業は主要鉱物の銅価格の下落、製造業はサプライチェーンの混乱、建設業は対内外国直接投資(FDI)の減速およびラオス中国鉄道、ビエンチャン~バンビエン高速道路の建設工事の遅れが影響するとした。また、サービスセクターも、ロックダウンによる消費の鈍化、外国人観光客、ビジネス客の減少の影響で落ち込むとした。

国際収支も悪化の可能性、求められる財政立て直し

新型コロナウイルス感染拡大の影響で国際収支の悪化が懸念されるとともに、財政も逼迫している。ADBの予測によると、ラオスの経常収支はGDP比でマイナス9.4~マイナス13.0%、2020年の財政収支はGDP比でマイナス6.0~マイナス7.0%となっている。根岸氏は「海外の需要縮小により経常収支の赤字が拡大する恐れがあり、FDIの減速で資本収支の黒字も減少した場合、輸入の1.5カ月分とされるラオスの外貨準備高は、さらに減少する可能性がある」と指摘した。

2020年上半期の財政状況については、当局が6月の国会の報告を準備中で公表されていないものの、2020年の当初予算案の時点で7億ドルだった赤字がさらに膨らむ、と予測した。ラオス政府は、タイの証券市場で発行したラオス国債の返済が目先の最優先課題となっており、行方が注目される。

経済の回復や、財政の安定化に向け、ADBはラオス政府に対し、G20が提案する債務の返済猶予を延長するイニシアチブへの参加(注)、歳入制約を所与とする財政運営、保守的な債務管理、新型コロナウイルスからの経済復興策の策定を提案している。

(注)同イニシアチブに参加するためには、IMFと世界銀行による債務監視システムの導入、全ての公共部門の債務の開示、新たな非譲歩的債務の契約停止などが求められる。

(山口あづ希)

(ラオス)

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