米商務省、バナジウムの輸入に対する232条調査のパブコメ募集を発表
(米国)
ニューヨーク発
2020年06月04日
米国商務省・産業安全保障局(BIS)は6月3日、バナジウムの輸入に関わる1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく調査開始に伴い、パブリックコメントを募集する旨を官報で公表した。7月20日にコメントは締め切られ、商務省は調査開始から270日以内に大統領に報告書を提出する(注1)。大統領が、当該製品の輸入が安全保障に脅威になると認定した場合、輸入制限措置をとることができる。
ウィルバー・ロス商務長官は6月2日のプレスリリースで、国内企業のAMGバナジウムとU.S.バナジウムによる申請を受けて調査を開始したとしている。申請企業は、中国とロシアの産業政策による市場歪曲(わいきょく)効果をはじめ、国外の生産国での政策により打撃を受けていると指摘している。官報では、輸入に際して具体的な製品を特定するHTSコードは、現段階では開示されておらず、パブコメを基に精査されると見られる。ロス商務長官は「バナジウムは米国の国防産業および重要インフラに利用されており、特定の航空宇宙製品にとって不可欠だ」としている。
232条に基づき、同製品が安全保障上の脅威かを判断する上で、BISは以下に関するコメントを重点的に募集する。国内産業・市場の動向に加え、海外との競争状況やそれらが国防に与える影響などが考慮される。
- 該当製品の輸入量、またはその他の状況
- 想定される国防上の要件を満たすために必要な国内生産量および生産能力
- 現在および将来において、生産に投入可能な人的資源、製品、原材料、製造設備、施設
- 国防上の要件を満たすために必要な産業の成長条件および(または)その成長の実現に不可欠な供給およびサービスに関わる条件(投資や探査、開発を含む)
- 外国との競争が該当製品にかかる産業の経済厚生に与える影響
- 該当製品の国内生産からの移管により生じる問題(大量の失業や政府の歳入減、投資または特殊技能に関わる損失、生産能力、その他重大な影響をもたらす恐れがあるもの)
- 米国経済の弱体化をもたらす関連要因
- その他関連要因〔例:「重要インフラ」(注2)〕分野での製品の使用実績およびその重要性)
企業・業界団体などはBISが指定するウェブサイト(注3)にコメントや関連情報を提出することが可能。コメントは機密情報を除き原則公開され、その後8月17日までそれらコメントに対する反論機会が与えられる。パブコメ後の公聴会が開催されるかは現時点で不明だが、開催される場合は別途、官報で周知するとしている。
(注1)実際の調査開始は官報で5月28日とされている。
(注2)大統領によって「重要インフラ」と位置付けられている産業は、サイバーセキュリティ・インフラストラクチャー・セキュリティ庁(CISA)ウェブサイトで確認可能。
(注3)パブリックコメントを含めた提出先は連邦ポータルサイトのドケット番号BIS-2020-0002となっている。
(磯部真一)
(米国)
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