「ポスト・コロナ」に向けた飲食料品の海外展開支援策を発表

(英国)

ロンドン発

2020年06月26日

英国の国際通商省(DIT)と環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は6月22日、共同で、新型コロナウイルスにより影響を受けた農業・食品産業の海外輸出を支援するための「回復プラン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。

同プランは、英国の食品産業が、新型コロナウイルスの影響により停滞した世界経済の回復による需要に速やかに対応できるよう支援するとともに、とりわけ中小企業が、現在交渉中の日本、米国、オーストラリアなどとの自由貿易協定(FTA)の恩恵を受けられるようサポートするものとされている。同プランの主な内容は、以下のとおり。

  • 国際通商省による「飲食料品輸出マスタークラス」の開設:同クラスでは、国際通商省の輸出専門家の支援の下、同省の国際的なネットワークも活用しつつ、個別のニーズに応じた広範なオンラインセミナー(ウェビナー)が提供される。
  • 国際通商省の既存の越境電子商取引(EC)サポートプログラムを拡張・強化:中小事業者向けのEコマース支援事業を立ち上げる。この支援事業には、Eコマース専門家によるマンツーマンの輸出診断、EC市場での輸出にフォーカスした動画コンテンツ(ポッドキャスト)の配信、自社サイトで海外向けに直接販売する事業者を対象としたウェブサイトの国際化ワークショップの開催、といった内容が含まれる。
  • 海外バイヤーとの関係構築や英国産品のプロモーションを目的としイベントプログラムの実施:最新技術を用い対面型又はバーチャルなイベントを実施する。これには、海外バイヤーへのバーチャルな商品試供や、飲食品サンプルの海外バイヤーへの発送支援などが含まれる。

そのほか、英国の食品を世界にPRする「フード・イズ・グレート」キャンペーンの対象国の拡張、アラブ首長国連邦を中心に中東地域を担当する環境・食糧・農村地域省の専門職員の配置、英国の輸出信用機関である英国輸出ファイナンスによる支援の強化などが、この回復プランでは打ち出されている。

本プランの発表に当たって、国際通商省のグラハム・スチュアート輸出担当相は「この支援パッケージは、輸出の『回復』を支援し、世界に通じる英国の事業者たちによる国際取引の拡大を助ける。また、本パッケージは、我が省が世界各国と交渉を進めている一連のFTAによって生まれるチャンスを、(食品)産業が活用できるように準備を促すものでもある」とコメントしている。

今回発表された回復プランからも、ポスト・コロナの「ニュー・ノーマル(新たな日常)」において、英国政府がEコマースをはじめとするオンライン・プラットフォームを重視していることが読み取れる。翻っては、日本でも、この分野において他国に後れをとらないよう、戦略的かつ迅速な対応が求められよう。

(市橋寛久)

(英国)

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