印中関係の緊張が貿易・経済関係に影響、不買運動や国産化推進などの動き

(インド)

ニューデリー発

2020年06月26日

インドで中国からの製品や投資流入に対する警戒が高まっている。北部ラダック地区の中国との国境係争地帯で、6月15日から16日にかけてインド軍と中国軍が衝突。インド側で将校1人を含む少なくとも20人の死者が出たことで反中感情が高まった。ソーシャルメディアでの中国製品のボイコットが呼び掛けられたほか、全インド貿易関係者連合(CAIT:The Confederation of All India Traders)は、化粧品、玩具、家具、履物、時計など450のカテゴリーにわたるリストを発表し、これらの品目について中国への依存を減らしインドでの国産化を進めるべきだと主張した。インド政府は中国企業の政府案件やインフラプロジェクトへの参加制限、中国からの完成品輸入にかかる関税増など、中国依存から脱するための包括的な対策を検討しているとの報道もある(「エコノミック・タイムズ」紙6月19日)。

インドはASEANとの多国間、およびシンガポールとの2国間で自由貿易協定(FTA)を結んでいるが、こうした貿易協定を利用したASEAN経由での中国からの迂回輸出を長年警戒している。今般の状況を受けてさらに警戒を強めているようで、当地メディアは「原産地規則の適用を厳格化する必要がある」との税関当局のコメントが報じている(「ファイナンシャル・エクスプレス」紙6月20日)。既に一部の企業からは、中国からの輸入品に対する審査が厳しくなっており、通関に時間を要しているとの声も聞こえている。また、中国からの資金で成長を図るインドのスタートアップにとっては、中国からの資金の流れへの目が厳しくなることで、資金計画を見直す必要も出てきそうだ。

西部マハーラーシュトラ州は、過去に同州への投資誘致イベントで調印した中国企業3社のMOUの一時凍結を表明。商工省は政府のE-マーケットサイト「GeM」にて原産国の表示を義務づけ、現地調達率50%以上の商品を抽出する「メーク・イン・インディア・フィルター」を導入(6月23日付商工省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)するなど、中央政府、州政府でも中国への警戒を示す事例や国産化推進を意識した動きが出始めている。

(磯崎静香)

(インド)

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