サンパウロ州政府、中国企業との提携による新型コロナ感染症向けワクチン製造を発表

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年06月15日

ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事は6月11日、同州保健省管轄のブタンタン研究所と、中国バイオ企業のシノバック・バイオテックが提携し新型コロナウイルス・ワクチンを製造することを発表した。

発表によると、ワクチンは治験を希望する患者へ投与を行い、ワクチンの有効性、安全性、使用法を最終的に確認する臨床試験(第3相試験)の段階にあり、配布前の最終段階にある。

ブタンタン研究所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、元々ペストワクチン生産を目的に設立された生物学研究センター。解毒血清の研究および生産や各種ワクチンを生産しており、現在では世界的に権威のある研究所となっている。

シノバック・バイオテック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、中国北京に本拠を置くワクチン製造会社で風邪やA型肝炎などのワクチン研究、開発および販売を手掛ける。同社は2009年に世界で初めてH1N1豚インフルエンザに対するワクチンを発売したことで知られる。同社は新型コロナウイルスのワクチン開発で先行する企業の1つで、4月の時点で年間1億回分を生産する準備ができていることを明らかにしていた。

今回のワクチン製造発表に先立ち、同じく新型コロナウイルスのワクチン開発で先行する英製薬大手アストラゼネカ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、オックスフォード大学が開発したワクチンを6月中にサンパウロとリオデジャネイロ在住の2,000人の治験希望者に臨床試験を行うことを6月3日に明らかしたばかり。現在、世界2位の新型コロナ感染者を抱えるブラジルで、現地生産を想定した製薬メーカーによるワクチン供給競争が激化する兆しをみせている。

6月11日付現地「エスタード」紙によると、アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンの臨床試験を担当するサンパウロ連邦大学(UNIFESP)研究員で、シエナ大学の国際ヘルス・イニシアチブ理事であるスー・アンコスタ・クレメンス氏は、「ブラジルでの臨床試験は臨床研究のみならず、ワクチン製造につながる機会」と強調している。

(大久保敦)

(ブラジル)

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