2020年の米国新車販売台数は大幅減を予想

(米国)

シカゴ発

2020年06月09日

主要自動車メーカーなどが加盟する業界団体自動車イノベーション協会(AAI)は6月3日、2020年の米国の新車販売台数が大幅減となる見込みを示した。これによると、最も楽観的な予測でも2020年の新車販売は1,400万台程度とされ、年初予測の1,700万台を大きく下回る。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う米国経済への影響が顕著に現れた一つの結果といえよう。自動車市場専門の調査会社なども2020年の新車販売台数の大幅減を見込む。中古車残存価値評価機関オートモーティブ・リース・ガイド(ALG)は1,260万台、英調査会社IHS マークイットは1,270万台、 英調査会社LMC オートモーティブは1,340万台と予想する。

AAIのジョン・ボゼーラ最高経営責任者(CEO)は同日開かれた上院の公聴会にて、自動車販売が1,700万台に回復するには2023年までかかる可能性があると予測を示した。さらに今後、自動車業界に起こりうる事態として、「新型コロナウイルス関連の影響による損失を吸収するにつれて、業界は技術開発に投資する資本が少なくなる」としつつ、「競争が激しく、資本集約型の自動車業界は、パンデミックからの回復とパーソナルモビリティ(注1)の将来を決めるイノベーションへの投資の継続という2つの課題に取り組むため、市場の安定を支援するための政策が重要になる」と政府の支援を訴えた。

レンタカー会社への販売減も深刻

レンタカー会社大手のハーツ(Hertz)およびアドバンテージ・レンタカー(Advantage Rent A Car)はそれぞれ5月22日、27日に破産を申請しており、新車販売に与える悪影響も懸念される。2019年には、レンタカー会社へのフリート販売(注2)が米国の新車販売台数の10%(170万台分に相当)を占めている。フリート販売は利益こそ低いものの、新車販売台数を押し上げ、自動車メーカーにキャッシュをもたらしているのが実態だ。米自動車大手のゼネラルモーターズ(GM)、フォードおよびフィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)のデトロイトスリーはフリート販売が多く、3社合計でフリート販売の実に56%を占める(「CNBCニュース」5月29日版)。日産自動車も20%を占めている。

各社ともオンライン販売を強化

このような状況で、自動車メーカー各社は少しでも販売を伸ばそうとさまざまな対策を講じる。GMは以前から「ショップ、クリック、ドライブ計画」として自動車のオンライン販売を促進してきたが、FCAも全米での自宅待機命令が続いたことを受け急速に新車のオンライン販売ツールを整備した。また販売に際してのインセンティブ強化も盛んだ。GMやFCAなどは一部モデルで最大84カ月の無利子ローンを提供、さらに購入後120日は支払いを免除するなど、一時解雇されている従業員にも自動車が購入しやすい制度を導入している。

(注1)1人乗り用に設計されたコンパクトな移動機器で、歩行者と従来の乗り物(自転車、自動二輪車、乗用車など)の間に位置付けられる。

(注2)レンタカー会社など大口顧客に買戻し権付きで一括販売すること。

(河内章、大原典子)

(米国)

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