米議会予算局、2020年の財政収支悪化とマイナス成長転換の見通しを発表

(米国)

ニューヨーク発

2020年05月01日

米国議会予算局(CBO)の4月24日の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策実施などにより、連邦政府の財政赤字は2020会計年度に約3兆7,000億ドル(GDP比17.9%)、2021会計年度に約2兆1,000億ドル(同9.8%)まで達し、2019年会計年度の9,840億ドル(同4.6%)から大幅に拡大する見通しだ(添付資料図参照)。

2020会計年度の赤字幅は、前年度の4倍近く(3.8倍)に跳ね上がり、世界金融危機後に当時のオバマ政権下で記録した1兆4,127億ドル(2009会計年度)を上回るとした。赤字額のGDP比(17.9%)も、1945会計年度(21.0%)以来、75年ぶりの高水準に達する見込みだ。2020年3月に公表された前回見通し(2020会計年度:1兆730億ドル、2021会計年度:1兆20億ドルの赤字)と比較すると、2020会計年度は約2.6兆ドル、2021会計年度は約1.1兆ドル、それぞれ大幅に赤字が拡大する。CBOは、2020年3月から4月にかけて成立した新型コロナウイルス関連法に基づく拡張的な財政政策や経済見通しの大幅な悪化などが、主な収支悪化要因になったとしている。

債務残高のGDP比についても、2019会計年度末の79%から大幅に上昇し、2020会計年度末に約101%、2021会計年度末に約108%に達するとした。前回見通し(それぞれ80.7%、81.7%)と比較すると、それぞれ約20ポイント、約26ポイントの大幅悪化となる。

経済成長率は2020年第2四半期に大幅減の見込み

経済成長率の見通し(注)は、2020年がマイナス5.6%と2008年(マイナス2.8%)以来12年ぶりのマイナスとなる一方で、2021年はプラス2.8%まで回復するとした(添付資料の表参照)。2020年1月に公表された前回見通し(2020年:2.2%、2021年:1.9%)と比較すると、それぞれ7.8ポイントの悪化、0.9ポイントの改善となる。その上で、2021年末の実質GDPは1月時点の見通しと比べ、6.7%減となると予測した。四半期別に成長率をみると、外出制限措置などを受けて2020年4~6月期(第2四半期)は前期比年率マイナス39.6%まで大きく落ち込むが、下半期にはそうした措置が徐々に緩和されて、7~9月期(第3四半期)にはプラス23.5%、10~12月期(第4四半期)にはプラス10.5%と反転していくとした。それでも2020年は前年比で大幅なマイナスとなっており、経済活動が元の水準を取り戻すには1年以上かかる見通しとなっている。

労働市場については、2020年4~6月期(第2四半期)と7~9月期(第3四半期)の半年間で、約2,700万人の雇用が失われ、約800万人が非労働力化することにより、この間の平均失業率は15%まで上昇するとした。

米シンクタンク「予算と政策の優先順位に関するセンター(CBPP)」は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、連邦議会が「人々の健康・福祉や経済状態を改善し、より深く、長期にわたる不況に陥るのを防ぐための必要な追加措置を講じていくことで、債務残高や財政赤字は拡大せざるを得ない」と指摘した(米政治紙「ポリティコ」4月24日)。

(注)10~12月期(第4四半期)の前年同期比ベース。2019年は2.1%(3次速報値)。

(権田直)

(米国)

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