広東省、2019年の知財訴訟審決件数は中国全体の3分の1

(中国)

広州発

2020年05月12日

広東省高級人民法院は4月20日、「2019年広東省の法院における知的財産権司法保護状況外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」についての報告書(以下、報告書)を発表した。広東省では知的財産権をめぐる訴訟案件が年々増加しており、広州知的財産権法院はこれらの訴訟案件に効率よく対応するため、特定分野の裁判チームの組成や巡回裁判の実施などの体制整備を推進している。

効率重視の体制を整備

2019年に広東省内の人民法院が受理した知的財産権に関する訴訟案件数(第一審、第二審、再審を含む)は、前年比60.9%増の15万7,363件と大きく伸び、審決件数は59.4%増の15万2,911件と過去最多を記録した。中国全体の審決件数の約3分の1を占めた(「大洋網」4月24日)。

報告書によると、広州知的財産権法院は医薬、オンラインゲームなど特定分野の裁判チームを立ち上げ対応したことで、類似案件の審理時間が短縮されたとしている。また、知財権をめぐる紛争が多発する地域や知財権保護のニーズが高い省レベルのハイテク区について、必要に応じて現地で法廷を開く巡回裁判所(仏山市、東莞市、恵州市、江門市)や、訴訟書類の受理など関連手続きをサポートする訴訟サービス拠点(中山市、汕頭市、肇慶市)を設置し、遠隔地からの案件申し立てと審理を効率的に実施した。2019年に、省内での各巡回裁判所や訴訟サービス拠点経由で受理、または立件された案件は229件となり、巡回裁判は37回実施された。

技術類、著作権の案件が増加

2019年に、広東省の地方人民法院が受理した技術関連の知財権(特許、技術秘密、独占、集積回路の回路配置、ソフトウェア、植物の新品種など)をめぐる訴訟案件は前年比7.4%増の6,694件で、技術関連の案件が増加傾向にある。

また、広東省の地方人民法院が受理した知的財産権民事一審案件(12万9,998件)では、著作権に関する訴訟の件数が最も多く、10万9,753件で全体の84.4%を占めた。

模倣品など、従来から問題視されてきた知財権侵害に関する案件のほか、近年では電子商取引(EC)やオンライン金融など、オンライン上の知財権侵害に関する案件にも注目が集まっている。広州インターネット法院(注)の発表によると、2019年のインターネット関連の新受案件数(著作権、金融、電子商取引を含む)は5万2,258件、うちオンライン上の著作権に関する案件が2万5,313件と、全体の約半数を占めた。

(注)広州インターネット法院は、2018年9月28日に設置された、広州市管轄範囲内のオンライン上の著作権侵害や金融、電子商取引に関わる争議を取り扱う。訴状受付、訴状受理、送付、証拠交換、開廷前の準備、開廷、判決などの一連の訴訟手続きを原則、オンライン上で行うことができる。

(黎偉君)

(中国)

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