新型コロナ感染拡大で広告収入減に苦しむメディアに対する支援を決定

(スイス)

ジュネーブ発

2020年05月26日

連邦参事会(内閣)は5月20日、新型コロナウイルス感染拡大により広告収入激減に苦しむメディア支援のため2つの緊急政令を採択した。外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますこれは、5月に開催された連邦議会特別会合において決議された、メディアに対する5,750万スイス・フラン(約63億2500万円、CHF、1CHF=約110円)の緊急支援を求める動議を受けたものだ。スイスのメディアは、新型コロナウイルス感染対策により行動制限措置が発動されて以降、主要な広告主であるレストラン、店舗からの出稿が急減し、発行頻度の減少のみならず職員の部分休業を余儀なくされていた。

まず、各家庭・企業から徴収されているラジオ・テレビ利用料金から3,000万CHFを民営ラジオ局・テレビ局の支援に充てる。FM/OUCラジオ免許(注)を所有する地方商業ラジオ局には48万7,128CHF、その他の地方非営利ラジオ局には14万5,132CHFの一時金が給付される。

また、サービス地域が限定されている、もしくは地域情報を提供しており、年間支出額が100万CHF以上の地方テレビ局には、90万1,327CHFの一時金が給付される。これらは、スイス全土で地域の報道サービスを確保するための施策だ。また、連邦政府は、報道各社が通信社であるキーストーン-SDA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのオンラインサービスを利用する料金を6カ月間負担する。この支援についても、ラジオ・テレビ利用料金から最大1,000万CHFが充てられる。

紙媒体の報道については、日刊または週刊の地方紙に対して、6月1日から6カ月間スイス郵便の配送が無料で提供される。報道向け基金の拡充というかたちで、このために連邦政府の一般財源から1,250万フランが充てられる。同基金の対象外となる4万部以上の日刊または週刊紙の配送費用についても6月1日から暫定的に1部当たり27セント(1/100 CHF)、上限500万CHFが支払われる。ただしこれらの支援スキームは、2020会計年度において利益の配当を行わないと誓約した新聞社にのみ提供される。

今回の政令決定により、連邦参事会は、動議で求められていたメディアへの支援は最大限実現されるとしている。

(注)FM/OUCとは87.5MHzから108Mhzのアナログステレオラジオ放送に使われていた超短波領域のこと。日本のFM周波数帯とほぼ同じで、超短波VMFに該当する。

(和田恭)

(スイス)

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