移動制限令を一部緩和、条件付きでほぼ全ての経済活動を再開

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年05月07日

ムヒディン・ヤシン首相は5月1日、新型コロナウイルス感染拡大防止策が一定の成果をあげつつある状況を考慮し、経済回復戦略に着手する段階に入ったとして、5月4日から一部の業種・活動を除くほぼ全ての経済活動を条件付きで再開すると発表した。

再開にあたっては、国家安全保障委員会が5月1日付で定めた標準手順書(SOP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注1)を厳格に順守することを条件としている。操業を再開する企業は、5月12日までに、国際貿易産業省(MITI)の専用サイト(CIMS3.0)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通じて会社情報およびSOPを順守することを宣誓する旨を登録する必要がある。ただし、移動制限令開始から5月3日までに、操業承認を得た企業については、上記登録は不要となる。

SOPは業種ごとに定められているが、どの業種でも工場や事業所内での1メートル以上の社会的距離の確保、従業員や来訪者の検温や手指の消毒、マスクの着用、共有スペースの消毒などの感染予防策を取ることは共通している。また、飲食店では、テーブル間の距離を2メートル以上離すなどの条件を満たせば店内での飲食が許可される。

再開を禁止する業種・活動リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)在マレーシア日本大使館による英語仮訳PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))に掲載されている業種・活動については経済活動を再開できない。多くの人が集まる各種集会、対面式のサービスなどのほか、娯楽施設や理髪店・美容院などが含まれる。

ムヒディン首相は、経済活動の条件付き再開に伴い、外出制限の緩和も発表した。これまで生活必需品の購入、医療サービスを受けることを目的とした自宅から半径10キロ圏内での外出に限っていたが、禁止される活動および州をまたぐ移動を除いて、外出目的と距離の制限が解除される。

多くの州で独自の方針

他方、セランゴール州、ペナン州、ケダ州、ネグリ・センビラン州、パハン州、ペラ州、クランタン州、サバ州、サラワク州の9州では、連邦政府の発表とは異なるかたちで経済活動の再開を実施していくとして、州政府が独自の方針を示している。MITIは5月4日、連邦政府の発表に従うよう声明を発表しているが、依然として州ごとに異なる対応がみられる。

中銀は本年3度目の政策金利引き下げを実施

首相発表によると、移動制限令により1日あたり24億リンギ(約600億円、1リンギ=約25リンギ)の経済損失が発生しており、累計損失額は約630億リンギに上る。中央銀行は5月5日に本年3度目となる政策金利の引き下げを実施した。政策金利は0.5ポイント引き下げられ、リーマン・ショック以来の水準である2.0%となった。

(注1)5月5日時点で、マレー語のみ。

(注2)同規則の別表にも、再開を禁止する業種・活動の一覧が掲載されている。

(田中麻理)

(マレーシア)

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