6月7日まで外出禁止を延長、ブエノスアイレス首都圏内は規制を強化

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年05月26日

アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は5月23日、オラシオ・ロドリーゲス・ラレッタ・ブエノスアイレス市長およびアクセル・キシロフ・ブエノスアイレス州知事と共同記者会見を行い、3月20日から導入している公衆衛生上の緊急事態による外出禁止令を、さらに6月7日まで延長すると発表した。

外出禁止令の発令から65日間が経過し、国内の新型コロナウイルス感染抑制に一定の成果が出ているが、ブエノスアイレス市および近郊のブエノスアイレス州40都市で構成されるAMBA(ブエノスアイレス首都圏)に加え、北部チャコ州、南部リオネグロ州、中部コルドバ州の一部都市部では、感染者数の増加が確認された。特にAMBAでは、貧民街を中心に感染者数が2週間で5倍に増加するなど急増傾向にあることが明らかになった。このため、同地域での移動や公共交通機関の管理を強化し、人が密集する商店街での店舗の営業を規制する、と発表した。ブエノスアイレス市および州政府がAMBAにおいて5月26日から導入する規制は次のとおり。

  • ブエノスアイレス市と州との間の移動管理を強化。防衛・治安・医療・介護従事者など、必要不可欠な業務に従事する者以外の移動は規制する。
  • 公共交通機関は、必要不可欠な業務に従事する者のみが利用できる。
  • これまでの移動許可証は無効とし、連邦政府ウェブサイトまたは連邦保健省の自己診断・追跡アプリ「Cuidar」から新たに申請する必要がある。
  • ブエノスアイレス市政府が定める特定の商店街(人の密集が多い通り)では、食料・医薬品販売以外の店舗営業は規制する。
  • ただし、ブエノスアイレス市で実施している子供の週末の散歩は、継続する。

他方、AMBAやチャコ州、コルドバ州、リオネグロ州の一部都市部以外の地域については、感染の拡大が確認されない限り、外出禁止の緩和が実施されていく予定。フェルナンデス大統領によれば、これら感染者数が拡大してない地域では、事業活動の80%が既に再開している。

なお、外出禁止令が継続されることに、国民の不満の声が高まっている。今回の規制で、ブエノスアイレス市では約2万5,000店舗が再び閉店することになり、5月24日付の現地紙「エル・クロニスタ」によれば、ブエノスアイレス市商工業連盟は「営業規制によって中小企業では従業員解雇や倒産の加速が余儀なくされる」と訴えている。また、同日付「インフォバエ」紙によると、民間調査会社アナリティカは、国民の80%が借金を背負っており、収入も大きく減少していることで、ウイルス感染への恐怖よりも経済の先行きに不安を抱えている、と説明する。民間調査会社インベックは、新型コロナ感染拡大後の中南米で最も経済的影響を受けるのはアルゼンチンだ、と主張している。多方面からの訴えに対し、フェルナンデス大統領は「外出禁止令は必要なだけ継続させる」「人の命を優先する方針」だと、23日の記者会見において述べている。

保健省によれば、全国における5月24日午前時点の感染者数は1万1,353人、うち死者449人。ブエノスアイレス市の感染者数は5,006人、ブエノスアイレス州は3,864人で、2つの地域だけで、国内全感染者数の78%を占める。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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