国連の世界経済見通し、悲観シナリオでは2021年もマイナス成長続く

(世界)

国際経済課

2020年05月14日

国連は5月13日発表の「世界経済状況・予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」2020年央報告書で、2020年の世界経済の成長率(実質GDP伸び率)をマイナス3.2%とし、1月の見通し(プラス2.5%)から大幅に下方修正した(添付資料図参照)。同予測の基本シナリオ(ベースライン)は、新型コロナウイルス拡大に伴う継続的なロックダウン対策により、2020年第2四半期(4~6月)の終わりまでに感染のまん延を大幅に抑え込むことができると想定。財政と金融の刺激により需要が回復するとともに、経済活動が同第3四半期(7~9月)以降に活発化すると見込む。

今回の報告書はベースラインとは別に、悲観と楽観のシナリオを用意した。悲観シナリオでは、主要国は2020年後半にパンデミック(世界的な大流行)の第2波に直面し、2021年初頭までロックダウンの延長と経済活動が制限されると想定。この仮定では、2020年はマイナス4.9%とベースラインよりも落ち込みが深くなるほか、2021年はマイナス0.5%とマイナス成長が続く見通しとなっている。

楽観的なシナリオでは、ワクチン開発などパンデミックへの対応が想定よりも早く進み、第2四半期の終わりまでに規制の完全な緩和を想定。この場合、2020年後半に総需要が回復することで同年はマイナス1.4%にとどまり、2021年はプラス6.1%のより堅固な回復が可能になる。

経済規模別にベースライン予測をみると、先進国・地域は2020年にマイナス5.0%と途上国・地域(マイナス0.7%)よりも落ち込みが大きい(添付資料表参照)。先進国・地域では、EUがマイナス5.5%とより厳しい状況に置かれている。途上国・地域では、中国は2019年のプラス6.1%からプラス1.7%へ低下すると予測している。中国は2020年第1四半期(1~3月)にマイナス成長を記録したが、封じ込め措置を段階的に解除することで、消費の回復とともに、生産の混乱緩和が期待されている。しかし、国際貿易や国内労働市場の低迷、企業バランスシートの悪化により、回復の勢いは抑制されると指摘した。

(朝倉啓介)

(世界)

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