WTI原油先物価格下落止まらず、史上初のマイナス値をつける

(米国)

ヒューストン発

2020年04月22日

原油価格の下落が止まらず、WTIの5月先物は4月20日、一時はバレルあたりマイナス40.32ドルまで落ちた。終値も先週末終値の1,8.27ドルから55.90ドルの下落で、マイナス37.63ドルとなり、史上初めてWTI原油先物がマイナスになった。また、米国エネルギー情報局(EIA)の1986年1月3日以降の原油価格公表値でも、10ドルを割った記録はない。

この異常な下落の原因は、在庫スペースを持たず、架空の原油取引を行う上場投資信託(Exchange-Traded Fund:ETF)が、翌21日にWTIの5月先物の取引が締め切られる前に売り払いに出たためと、報じられている(「フォーブス」4月20日)。

EIAの4月15日の発表によれば、全米の原油在庫量(戦略備蓄分を除く)は4月10日までに総量で5億361万8,000バレルまで積み上がっている。特にWTI原油価格への影響が大きいオクラホマ州クッシングの原油在庫量だけでみると、総在庫量は5,496万バレル、ネットで5,288万バレル(パイプライン中の原油を除く)。クッシングの4月3日から10日までの在庫増加量は572万バレルのペースで、仮にこのペースで積み上がれば、現在の空き容量2,321万バレル分は5月8日にはほぼ満杯になる計算だ。

トランプ大統領は4月20日午後5時30分からの新型コロナウイルスの影響に関する記者会見で、原油価格および在庫量について短く事実関係に言及したが、その時点では明確な対策については触れなかった。

最近の原油価格に影響を与えたとみられる出来事と公的機関による発表については、添付資料を参照。

(中川直人)

(米国)

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