操業承認済み企業の人員・操業時間制限が緩和、フル稼働には課題も
(マレーシア)
クアラルンプール発
2020年04月30日
国際貿易産業省(MITI)は4月28日、操業承認を得ている企業に対する人員と操業時間の制限を、移動制限令フェーズ4に入る4月29日より緩和することを発表した。すべての従業員の出勤が許可された上、営業時間の制限が撤廃されたためフル稼働が可能となったものの、実質的な稼働再開に向けた課題を指摘する声もある。
フル稼働には、全従業員リストの提出を
フル稼働に切り替える際のMITIへの再申請は不要だが、操業承認申請時に全従業員のリストを提出していない企業については、申請ポータルサイトより改めて全従業員リストを提出し、承認を得る必要がある。従業員リストの再提出については、MITIが手順を発表している。操業に際しては、業種ごとの標準手順書(SOP)を順守し、特に社会的距離の確保、共有スペースの消毒などの衛生環境管理を徹底するよう強調している。MITIは4月29日現在、SOPの更新を行っており、近日新たなSOPが発表される見通し。
国内外サプライチェーン回復を重要視
今回の大幅な緩和は、MITI、財務省、中銀、政府投資会社のカザナ・ナショナルが参加した経済行動委員会(EAC)による提案を元にしている。マレーシア国内における新型コロナウイルスの感染者数が減少傾向にあることを鑑み、経済の復興、特に製品・サービスの国内外サプライチェーンの回復、さらには中小企業の経営改善を重要視し、国家安全保障委員会にて決定したものだ(4月28日、ザ・エッジ紙)。今後、段階的な経済活動の再開に向け、操業を許可する特定業種の拡大を検討しているという。
フル稼働再開には課題も
今回の緩和策により、操業承認を得た企業はフル稼働が可能になる。しかし、日系企業では地方政府の査察が強化されている点を懸念する声も上がる。操業承認を得て稼働している企業の一部では、衛生管理が不十分との理由などから地方政府から操業停止命令を受けたり、MITIに承認された従業員数からさらに削減するように求められた事例も見受けられる。
MITIの発表には、SOPを順守していないことが確認された場合は、即時に操業承認を取り消すとしており、フル稼働に慎重な姿勢を見せる日系企業も少なくない。また、サプライヤー企業が操業承認を得られていないことから、原材料・部品の確保が十分でなく、フル稼働をしたくても実質的にはできないという課題も残る。
(田中麻理)
(マレーシア)
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