新型コロナ感染から物流支えるトラック運転手を守る取り組み

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年04月06日

ブラジルでは新型コロナウイルス感染急拡大により国内各州政府と自治体は3月22日の週からロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。こうした中、市民生活に欠かせない物流の担い手である全国200万人に上るトラック運転手は昼夜を問わず働き続けている。

ブラジル国内輸送貨物全体に占めるトラック輸送の割合は6割に達する(2018年時点)。日系企業関係者によると、彼らが倒れれば「ブラジルの物流は危機的状況に陥る」可能性がある。2018年にはトラック運転手によるストライキで物流が大きく滞り、国内経済が大打撃を受けたことは記憶に新しい。

そうした中、トラック運転手を感染から守るため、彼らの労働環境を整える取り組みが全国で始まっている。南部パラナ州はパラナグア国際港で体温測定と感染防止指導を行っている。ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事はハイウエーのドライブインで、トラック運転手へ14万個の軽食キットを配布することを発表した。3月27日付現地紙「グローボ」のウェブサイト「G1」によると、ブラジル内陸部マトグロッソ・ド・スル州内レストランのオーナーと従業員は、同州とサンパウロ内陸部のハイウエーで無料のランチボックスをトラック運転手に配布した。オーナーは、「トラック運転手はウイルス感染拡大時にも食品を市場に運び、医薬品を各都市に運び、燃料を救急車に運び、病院と警察の運営を維持するために運転し続けている。ブラジルの英雄だ」と話している。

輸送社会サービス・全国輸送学習サービス(SEST-SENAT)は、3月27日から全国159の支援ポイントでトラック運転手にスナックと感染防止クリーニング用品を含むキットを配布、感染防止指導を開始した。SEST-SENATのバンデール・コスタ会長はトラック運転手について、「彼らは食糧や医薬品のみならず野外病院建設に使用する資材も輸送する社会に不可欠な存在だ」とし、「この取り組みはブラジル社会からの感謝だ」と説明している。

ブラジル植物油工業会(ABIOVE)は4月1日以降、全国158カ所のハイウエー待機場で、1.待機場での感染防止策と手順に関する指導パンフレット配布、2.待機中ドライバーへの朝昼晩3回のスナックキット配布、3.待機場のバスルームなどの消毒強化、4.待機場のアクセス可能な場所での消毒用アルコールジェル配置、5.待機場での人と人との距離を確保するためのマーキング、6.ドライバーの体温測定・記録、7.ドライバーへのマスク配布、を開始した。

ブラジルにとって大豆は植物油の原料のみならず、家畜飼料やバイオディーゼルに使用される重要産品で、その輸送が止まれば国内経済への影響は甚大だ。ABIOVEのナザール会長は「輸送はブラジル社会全体の根幹だ」とした上で、「危機的状況のなかトラック運転手の労働条件を守るためにわれわれが行動を起こすことが重要だ」と語っている。

(大久保敦)

(ブラジル)

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