欧州委、新型コロナウイルス対応に関する競争法ガイダンスを公表

(EU)

ブリュッセル発

2020年04月09日

欧州委員会は4月8日、医薬品、医療用品の製造販売など新型コロナウイルス対応において必要性・緊急性の高い企業行動に関するEU競争法上のガイダンス「現在のCOVID-19感染拡大に起因する緊急事態に対応するための企業間協調の反トラスト的側面への評価に関する時限的枠組み」をまとめたコミュニケーションPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(政策文書)を公表した。

ガイダンスでは、主に2つのポイントを挙げている。第1に、医薬品や医療用品の不足による一層の感染拡大を回避するために必要な企業間の協調的行為は、一定の条件下で一時的にEU競争法への抵触を免れること。第2に、かかる企業間での取り組みにおいて、競争法への抵触可能性に関して不明な点がある場合、企業は欧州委に口頭またはEメールでの助言を求めることができる外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます上、必要な場合には欧州委が、当該協調的行為が競争法に抵触しないことを保証し、企業の不安を取り除くための「コンフォートレター」を発行する用意があるとしている。

1点目について欧州委は、特定の医薬品を一時的に急激に増産するケースを例に、製造企業が生産力を当該医薬品に集中させる結果、他の医薬品の生産量や在庫の不足が生じる可能性があり、企業間で供給量の調整を行う必要となる場合が想定される、と指摘。このような場合を想定し、企業間協調が競争法への抵触を免れるための条件として、(1)必要不可欠な産品やサービスの供給不足に対応あるいはそれを回避するため、最も効率的な手段によって実際に当該品の生産を増加させるように企図され、その必要性があること、(2)当該行為が一時的な性質のものであること、(3)供給不足への対応または供給不足の回避という目的を達成するために、厳密に必要な程度を超過しないこと、の3点を挙げた。主な対象としては医薬品などヘルスケア分野が挙げられているが、例えば関連物資の増産や、不足する製品を生産開始するため製造ラインの一部を変更する場合など、他の製品分野を排除するものではないとしている。

第2の点では、競争法への抵触可能性の有無について企業が法的確実性を必要とする場合に、欧州委員会競争総局がコンフォートレター(競争法に適合していることを確認する書簡)を発行できるとし、4月8日のプレスリリースでは、その第1例として企業グループ「欧州のための医薬品(Medicines for Europe、旧称:欧州ジェネリック医薬品協会)」に対し、レターを発行したと発表した。

欧州委のマルグレーテ・ベスタエアー上級副委員長(競争政策担当)は「(必要な)供給を確保すべく、競争総局は、需要の高い産品の生産を加速させる協調的イニシアチブを後押しするための十分なガイダンスと安心材料を、企業らに速やかに提供する」と述べた。

本ガイダンスは4月8日から適用開始され、欧州委が現在の例外的な状況が収束したと判断し適用の終了を宣言するまでの間、有効となる。

(安田啓)

(EU)

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