英・EU首席交渉官が共同声明、交渉日程を再設定するも6月大枠合意目標は変わらず

(英国、EU)

ロンドン発

2020年04月16日

英国とEUの将来関係に関する交渉(2020年2月26日記事2月28日記事参照)をめぐり、英国のデービッド・フロスト氏とEUのミシェル・バルニエ氏の両首席交渉官が4月15日、ビデオ会議を実施。今後の交渉日程などに関する共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

その中で両氏は、6月までに具体性を伴った交渉の進展を達成するため、さらに交渉ラウンドを重ねる必要があることで一致したと表明。4月20日と5月11日、6月1日から始まる各週の計3回、ビデオ会議による交渉を実施し、6月に首脳レベルで進捗を評価する考えを明らかにした。

3月2日に第1ラウンドが始まった英EU将来関係の交渉(2020年3月3日記事参照)は、その後に感染が急束に拡大した新型コロナウイルスの影響で、第2、第3ラウンドが延期されていた。その間、まずバルニエ氏がウイルスに感染、フロスト氏も感染症状がみられ、自己隔離する事態となっていた。

なおも2020年末の移行期間終了を目標

当初は5月中旬までに1ラウンド当たり3~4日間かけて行う予定だった第2~第5ラウンドの交渉について、新たな日程では1ラウンド当たりの日数を増やして、6月初旬まで計3ラウンドで行い、交渉の遅れを挽回しようとするもの。6月までに大枠合意、9月までに最終合意を実現し、12月末に英国のEU離脱(ブレグジット)移行期間を終了させるという当初の目標スケジュールを英・EU双方とも維持していることがあらためて明確になった。両首席交渉官のビデオ会議前日の14日には、リシ・スーナック財務相が会見で「設定した日程で努力していく立場に変わりはない」と発言するなど、英国政府は移行期間の延長を一貫して否定している。

政府の姿勢に、産業界からは不満の声も聞こえる。貨物輸送協会(FTA)は3月下旬の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、新型コロナウイルスによる難局に直面する中で、移行期間終了後に備えた新たな制度を短期間で効果的に実行に移すことは不可能だと明言。移行期間延長の要求と物流部門に影響を及ぼす国内法改正の停止をすぐにでも行うよう、政府に求めている。

なお、双方が1月に批准・発効したEU離脱協定を実行に移すための英・EUの「合同委員会」は3月30日にビデオ会議で第1回会合を開催した。同会議には、グレートブリテン島と北アイルランド間での関税徴収の詳細を設計する役割などもある(2019年10月18日記事参照)。一方で、そのための準備作業を移行期間中に完了することは大きな難題と指摘する声は、新型コロナウイルス流行前から聞かれている。

9カ月の移行期間に入って早くも2カ月半が経過。新型ウイルスが追い打ちをかける中、英国のブレグジットにかかる不透明感がまたしても重くのしかかる。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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