市民の73.4%が治安悪いと認識、新型コロナウイルス感染拡大でさらに悪化の懸念

(メキシコ)

メキシコ発

2020年04月20日

メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)は4月16日、2020年第1四半期(1~3月)の全国86カ所の治安状況についてのアンケート結果を公表した。調査対象は全国70都市(メキシコ市は16行政区で別々に調査)の合計2万5,500家庭で、回答者は18歳以上の成人男女。この調査によると、男性の67.2%、女性の78.6%、男女合計で73.4%が「自身が居住する都市の治安が悪いと感じる」と回答した。アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が就任した2018年12月以降では、2019年第3四半期(7~9月)までは下降傾向にあったが、第4四半期(10~12月)以降、上昇に転じている(添付資料の図参照)。

進出日系企業の製造・販売拠点や日本人駐在員が多く居住する都市を見ると、グアナファト州レオン市が86カ所中8位の89.6%と最も高く、前期比で9.5ポイント上昇した(添付資料の表参照)。ヌエボレオン州内では、メキシコの財閥系大手企業の本社が多いサンペドロガルサガルシア市は24.0%と、前期比5.1ポイント増ながらも、調査対象の86カ所の中で最も低かった。また、メキシコ市内では、クアウテモック区(68.5%)、ミゲルイダルゴ区(66.1%)、ベニトフアレス区(49.0%)の全てで前期よりも改善が見られた。特にクアウテモック区は12.1ポイント減と、86カ所中で減少幅が最も大きかった。なお、バハカリフォルニア州ティファナ市は前期比14.1ポイント増の85.6%となり、増加幅は全国最大だった。

2月末にメキシコで新型コロナウイルスの感染が確認された後、3月からは外出を自粛する市民が増え始めた。3月30日の衛生上の緊急事態宣言発令後、翌日からメキシコ市ではスーパーマーケットやコンビニなどの食料品を扱う店舗を除き、百貨店やショッピングモールがほぼ全て閉鎖された。これを受け、閉店した店への窃盗事件が増加した。全国スーパーマーケット・百貨店協会(ANTAD)によると、協会傘下企業の大手チェーンだけでも、4月7日までの1週間にメキシコ市だけで68件の窃盗・強盗事件が発生したという。政府は4月16日、外出自粛や不可欠な活動と認められたビジネスのみ操業を続けられる期間を、当初の4月30日から5月30日へ延長すると発表した。こうした経済活動の縮小により、失業者が増加し、治安が悪化することが懸念されている。

(志賀大祐)

(メキシコ)

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