新型コロナ対策の給与8割給付制度、受付開始初日で14万件の申請

(英国)

ロンドン発

2020年04月22日

英国政府は4月20日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時帰休となった従業員の給与80%を給付する企業支援策(2020年3月23日記事参照)の申請の受付を開始した。午前8時の開始直後から申請が殺到、リシ・スーナック財務相は同日夕方の会見で、午後4時までの申請企業数が14万社以上にのぼったと述べた。

同制度は、一時帰休の従業員の歩合や賞与を除く税引前給与の80%を、1人当たり月額2,500ポンド(約33万2,500円、1ポンド=約133円)を上限に政府が給付するもの。付随する国民保険と年金の企業負担部分(最低料率の3%分)も支給する。3月19日以前に歳入関税庁(HMRC)の納税システム(PAYE給与支払いスキーム)に登録していることなどが条件(注1)。政府は当初、2月28日時点で雇用されている従業員を対象としていたが、4月15日に範囲を3月19日まで拡大。2月28日時点で雇用されていた従業員が、翌日から3月19日までの間に退職または解雇となった場合も、企業が再雇用した上で一時帰休の扱いにすれば、給付の対象にできるようにした。政府はさらに4月17日、3月1日から5月末の3カ月間としていた給付対象期間を6月末まで1カ月延長するなど、雇用を最大限支える姿勢を示している。HMRCのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから申し込みが可能。申請から6営業日での振り込みを目指す。

英国商工会議所(BCC)が会員企業を対象に4月8~10日に行った調査では、回答企業(700社以上)のうち、66%が、既に一時帰休を導入したと回答。対象となる従業員は膨大な数と見込まれるが、財務省は当制度に予算上限を設けず、できる限り多くの企業に給付するとしている。

中堅・大企業、スタートアップ向け金融支援も相次ぎ導入

4月20日には、中堅・大企業向け緊急融資の申請受付も開始。スーナック財務相が4月3日に概要を発表した中堅企業向け融資(2020年4月7日記事参照)を大企業向けにも拡充したもので、当初の年商「5億ポンド」の上限を撤廃。融資限度額も当初発表時の2,500万ポンドから、売上高2億5,000万ポンド超の企業については5,000万ポンドまで拡大した。政府系英国ビジネス銀行が承認した市中銀行を通じて資金を供給する(注2)。

さらに財務省は同日、スタートアップ向けに5月から新たな金融支援を導入すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。過去5年間で第三者投資家から25万ポンド以上を調達した実績を持つ未上場企業を対象に、民間投資家からの新規融資額を限度に、1社あたり12万5,000~500万ポンドを融資し、次の適格資金調達ラウンドまたは返済期限に自動的に株式に転換する。政府が英国ビジネス銀行を通じて2億5,000万ポンドを投入し、民間資金2億5,000万ポンドと合わせて総額5億ポンド規模を見込む。加えて同省は、政府系機関イノベートUKの既存の融資・助成制度に7億5,000万ポンドを投じ、研究開発型中小企業の支援を拡大すると発表。資金供給は、5月中旬にも始まる予定だ。

(注1)当制度の概要と、その他の企業・雇用関連対策は、ジェトロ(ロンドン)が作成した一覧PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)から閲覧可能。

(注2)認可銀行は、英国ビジネス銀行ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで参照可能。

(宮崎拓)

(英国)

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