3月の米製造業部門の景況感、新型コロナウイルスの世界的流行による需要低迷を受けて低下
(米国)
ニューヨーク発
2020年04月06日
米サプライマネジメント協会(ISM:The Institute for Supply Management)の発表(4月1日)によると、3月のISM製造業景況指数は、前月(50.1)より1.0ポイント減の49.1となった(添付資料参照)。拡大局面を示すベースラインである50を下回るのは、2019年12月(47.8)以来3カ月ぶり。
ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は、「新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)とエネルギー市場のボラティリティー(変動性)の高まりによって明らかに影響を受けた」と述べた。特に、景況の先行指標である新規受注指数(42.2)が前月(49.8)から大きく低下(7.6ポイント減)し、2009年3月(41.3)以来11年ぶりの低水準となっており、「(経済全体の)需要が低迷している」と指摘した。調査回答者からも以下のとおり、新型コロナウイルスの感染拡大による業況悪化などの影響を指摘する声が聞かれている。
- コンピュータ・電子製品:感染拡大が中国の原材料サプライチェーンに影響を与え、同地の収益に影響が出ている。
- 化学製品:新型コロナウイルス感染症と原油価格変動の2つがビジネスに影響。
- 輸送用機器:感染拡大は調達や物流に影響を与えており、原材料や部品の不足によって航空輸送と生産を妨げている。
- 食品・飲料・たばこ製品:感染拡大を受けて、過去最高となる受注を獲得。
- 石油・石炭製品:石油製品に対する世界需要は減少しているにもかかわらず、供給が増加している。
- 組み立て金属製品:米国内での感染拡大は、国内事業に影響を与え始めるかもしれない。一方で、アジアのサプライヤーは調子を取り戻しつつある。
- 機械:感染拡大により、工場の生産性が30%低下。
- 非金属鉱物製品:需要の減少と(注文の)キャンセルの増加がみられる。
- プラスチック・ゴム製品:顧客の工場閉鎖やその他の新型コロナウイルス対応の結果として、北米の全ての製造工場が操業停止か、大幅縮小に至った。
- 家具・同関連製品:生産量が4.3%減少。サプライチェーンの一部が新型コロナウイルスの影響を受けている。
供給不足を受けて入荷遅延指数が上昇
業種別にみると、18業種のうち6業種が「減速」と報告した(石油・石炭製品、繊維工業、輸送用機器、家具・同関連製品、組み立て金属製品、機械の順)。一方で、「拡大」と報告したのは10業種だった(出版・同関連サービス、食品・飲料・たばこ製品、アパレル・皮革製品、木材製品、紙製品、化学製品、コンピュータ・電子製品、一次金属、その他製造業、プラスチック・ゴム製品の順)
製造業の生産活動を示す生産指数は前月(50.3)より2.6ポイント低下の47.7、労働市場の現況を示す雇用指数は前月(46.9)より3.1ポイント低下の43.8、在庫水準の多寡を示す在庫指数は前月(46.5)より0.4ポイント上昇の46.9と、いずれも拡大局面を示す目安となる50を下回った。特に雇用指数は、2009年5月(35.3)以来10年10カ月ぶりの低水準を記録した。前出のフィオレ会長は、「これほど状況が速く変化するのをみたことがない」が、「まだ底を打っていないことは確実だ」と述べた(ブルームバーグ4月1日)。
一方で、入荷遅延指数は前月(57.3)より7.7ポイント上昇の65.0と、2018年6月(68.2)以来の高水準となった。同指数は景気回復や需要の高まりを受けて入荷遅延が生じ、上昇することが一般的であるが、フィオレ会長は「(今回の上昇は)主に新型コロナウイルス関連の特に中国からの供給(不足)の問題」が影響していると指摘した。
(権田直)
(米国)
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