ロシア政府、史上初の原油マイナス値に冷静な反応

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年04月23日

新型コロナウイルス感染拡大による世界の経済活動の低下と、それに伴う原油需要の急減を背景に、原油主要指標WTIは4月20日に史上初でマイナス値を記録した。この事象に対し、ロシア政府は比較的冷静に反応している。

4月20日、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)でWTI先物(期日5月物)の価格が1バレル当たりマイナス37.6ドルと史上初めてマイナス値を記録(「タス通信」4月22日)。ロンドン国際石油取引所(ICE)におけるブレント原油価格も4月22日に1バレル15.98ドルと1999年6月以来の安値で取引された(「タス通信」4月22日)。

ロシア・エネルギー省のアレクサンドル・ノワク大臣は4月21日、今回の状況についてa. 世界経済の回復への不確実性の高まりと原油需要の急減、b. 世界の貯蔵施設における過剰在庫状況、c. WTIの5月先物の取引期限が迫る4月20日に投機的な動きがみられたこと、などによって発生したものと説明。OPECプラスによる減産合意が5月に開始されるため、(原油価格を押し下げる)市場圧力は緩和されるとの見方を示した(「タス通信」4月22日)。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官も4月21日、今回の状況を「投機的な瞬間に過ぎず、現実に対して過度に否定的な評価をすべきでない」と語った(「コメルサント」紙4月21日)。

ロシア経済への影響に関して、ロシア上院と下院が発行する「議会新聞」(4月21日)は、ロシア国内のガソリン価格にはほとんど影響していないと指摘。官報「ロシア新聞」(4月22日)は、今回の劇的な出来事にもかかわらずルーブル為替レートは安定していたとし、その理由として、市場関係者が現在のパニック状況の早期収束を期待しているため、と評した。

他方、石油ガス関連収入に依存する、ロシアの財政運営は厳しい状況にある。アントン・シルアノフ財務相は4月20日、現在の原油価格水準では、2020年の財政赤字が5兆6,000億ルーブル(約7兆8,400億円、1ルーブル=約1.4円)に膨らむと説明。財政赤字の埋め合わせとして、国民福祉基金(注)を2兆ルーブル取り崩すほか、それ以外の財源からの1兆ルーブルの確保、国債発行などが必要となると述べた(「レグナム」4月20日)。

(注)石油天然ガスの輸出余剰金の一部を積み立て、インフラプロジェクトや開発金融機関への資金供給、対外債務返済などに活用されている国家ファンド。

(齋藤寛)

(ロシア)

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